結核
Online ISSN : 1884-2410
Print ISSN : 0022-9776
ISSN-L : 0022-9776
化学予防
山岸 文雄
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 80 巻 10 号 p. 647-653

詳細
抄録

わが国の公費負担による化学予防の対象者は,結核患者と最近接触し,感染を受けたと判断された29歳以下の者である。一方,ATSICDCでは,化学予防を潜在結核感染症の治療と呼び,結核発病のリスクの高い者では年齢によらず治療を行うこととしている。潜在結核感染症の治療は,通常イソニアジドを投与し,その期間は6カ月でも効果はあるが,9カ月間がより望ましいとした。最近,欧米で,抗腫瘍壊死因子αであるインフリキシマブ投与例から結核が多発している。わが国では,関節リウマチにインフリキシマブ投与後,6カ月間の評価期間の終了した2,000例中11例に結核を発病した(10万対550)。インフリキシマブ投与前のツベルクリン反応は,未実施が2例,陰性は4例であった。また陽性例でも発赤径の小さなものが多かった。これに対し日本結核病学会と日本リウマチ学会から合同で勧告が出された。免疫抑制作用のある薬剤を使用している者では,ツベルクリン反応陽性の者,あるいは胸部X線上結核感染の証拠となる所見のある者,その他結核感染を受けた可能性が大きい者(例えば年齢が60歳以上の者など)で,医師が必要と判断した者については,結核の化学療法を受けたことがない者では,積極的に化学予防を行うことが望ましいとした。年齢に関係なく積極的な化学予防が実施されることにより,結核発病のリスクの高い者からの結核が減少することが望まれる。

著者関連情報
© 日本結核病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top