結核
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カンボジアにおける結核サービスの地方展開は治療の遅れを有意に短縮させた
Saint SALY小野崎 郁史石川 信克
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2006 年 81 巻 7 号 p. 467-474

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抄録

〔目的〕カンボジアの地方でDOTSのプライマリーケアセンターへの展開が完了した2パイロット郡とDOTSが郡病院で実施されている4対照郡で,結核の治療の遅れの期間と患者行動を比較した。〔方法〕2002年5月1日から7月31日にパイロット郡と対照郡で発見登録された全薪塗抹陽性患者に対し,定められた様式に従って聞き取り調査を実施。〔結果〕発症の自覚から治療にいたる期間の中央値は,パイロット郡58日,対照郡232日で有意な差があった(p<0.01)。結核診療施設での診断の遅れの中央値は,パイロット郡で10日,対照郡で6日だった(p<0.01)。患者は症状自覚後比較的早く受診行動をとる(中央値7日)が,その後結核サービスにたどり着くまでの期間が長い(パイロット郡24日,対照郡185日,p<0.01)。結核サービスセンターへの距離と交通費が結核治療の遅れを規定する有意な要素で,性・年齢・識字力などは遅れを規定する要素ではなかった。〔結論〕カンボジアにおけるDOTSのヘルスセンターレベルへの展開は,地方における結核治療の遅れを有意に短縮した。貧しい僻地住民が容易に到達できる所までDOTSを展開する必要がある。

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