2008 年 43 巻 4 号 p. 254-257
超高圧電顕は,厚い切片の観察を可能にしたことから,医学・生物学における形態学的研究に新たな展開をもたらした.その例として本稿では脳卒中モデルラットを用いた高血圧による脳浮腫の形態学的研究を紹介する.通常の透過型電顕では神経の変性や血管透過性の亢進を示す所見は認められるものの,その原因を明らかにすることは不可能であったが,超高圧電顕により厚い試料を観察し,トモグラフィーを作成して三次元の解析を行うことにより,神経細胞におけるdendrite spineの変化や,微小血管における好中球の接着の様相が明らかとなった.超高圧電顕による観察およびコンピュータを用いた立体像の構築さらにトモグラフィーの作成による解析は,従来の光顕と電顕のイメージギャップを埋めるだけではなく,形態と機能を結びつける手段としても極めて有用であり,今後病理形態学への応用が期待される.