2009 年 44 巻 2 号 p. 93-97
ダイニンは,微小管上を運動する分子モータータンパク質である.その運動を説明する最も一般的なモデルは,ダイニン分子がストークと呼ばれるドメインの先端で微小管に結合し,ストークを回転させることによって微小管を動かすというものだった.しかし,ストークは単一のコイルドコイル構造から成る細い構造であり,微小管に結合した状態での電子顕微鏡観察は,ネガティブ染色法でもクライオ電子顕微鏡法でも難しかった.我々は,酢酸ウラニル染色とクライオ電子顕微鏡を組み合わせた新方法「クライオポジティブ染色法」を用いることにより,微小管に結合したストークの観察に成功した.2つのヌクレオチド状態で構造を比較した結果,上記モデルに反して,ストークは微小管に対してほとんど角度を変化させないことがわかった.