顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
特集:低次元物質の微細構造を探る
原子分解能低加速電圧TEMの開発と低次元物質の観察
森下 茂幸向井 雅貴沢田 英敬林 永昌千賀 亮典末永 和知
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2018 年 53 巻 2 号 p. 57-61

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抄録

透過型電子顕微鏡を用いて低次元物質を観察する際には,試料ダメージを抑えるため低い加速電圧が用いられる.しかし,加速電圧が低い場合,幾何収差に加えて色収差の影響が顕著に現れるため原子分解能での観察が難しかった.そこで我々は,高次収差の補正が可能なデルタ型収差補正装置に加え,モノクロメーターを搭載することで,幾何収差および色収差を共に制御し,低加速電圧TEMの分解能向上に取り組んだ.これにより,15–60 kVにおいてグラフェンの炭素原子間隔0.142 nmを分離して観察することに成功した.15 kVでの単層WS2像では,フーリエ変換において波長の10倍以下に対応するスポットも得られた.また,炭素原子鎖を動的に観察することで,広い視野範囲での原子分解能動的観察が可能なことも示した.今後はこの原子分解能低加速電圧TEMを用いることで,種々の低次元物質の構造解析が進むものと期待される.

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© 2018 公益社団法人 日本顕微鏡学会
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