顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
特集:高速AFM 観察が可能にした細菌細胞のリアルタイム構造変化
高速AFMが捕らえた!Mycoplasma mobileの滑走装置
小林 昂平古寺 哲幸田原 悠平豊永 拓真笠井 大司安藤 敏夫宮田 真人
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2019 年 54 巻 2 号 p. 67-71

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抄録

Mycoplasma mobile(以下モービレ)は,ペプチドグリカン層を持たない,魚の病原細菌(単細胞の生物)である.モービレは固形物表面にはりつき,はりついたまま滑るように動く滑走運動を行う.滑走メカニズムにおいて,モービレの細胞表面にあるタンパク質でできた“あし”が,宿主細胞表面のシアル酸オリゴ糖を引き寄せ,菌体を前に進める.この滑走運動は,細胞内部にあるモーターがATPを加水分解することにより駆動されるが,ATPの加水分解によりモーターがどのような構造変化を起こすかは明らかになっていない.そこで本研究では,高速原子間力顕微鏡(以下高速AFM)を用いて,細胞内部におけるモーターの動きを可視化することを目的とした.ガラス基板表面に貼り付けた細胞表面を高速AFMでスキャンすると,内部モーターと思われる粒状の構造がシート状に並んでいる様子が見られた.さらに,個々の粒子は滑走方向に対して右方向に8.2 nmシフトする動きを示した.

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© 2019 公益社団法人 日本顕微鏡学会
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