生体組織の有する極めて微細で複雑な形態の観察には,電子顕微鏡(電顕)が不可欠である.しかし,従来の電顕撮像のセットアップでは撮像できる領域が極めて狭く,数個程度の細胞レベルの観察しか行えず,「組織レベル」での形態情報の全体像を網羅的かつ定量的に解析することは困難であった.本稿では,自動撮像技術を搭載した走査型電顕技術を従来の樹脂包埋した組織切片の観察に適用することで,組織形態を広域領域かつ高解像度に撮像する方法論「広域切片SEM法」を紹介する.そして,連続の超薄切片を作製するアレイトモグラフィ法を併用した広域の立体観察法,さらには深層学習を用いた超微形態画像の定量解析法を概説する.これらの技術基盤による生体組織の画像ビッグデータ解析を総称して,網羅的組織形態解析「モルフォミクス解析」と呼ばれる.最後に,このモルフォミクス解析を用いた,今後の形態学研究を展望する.