2020 年 55 巻 1 号 p. 37-42
近年,加速電圧が200 kVのクライオ電子顕微鏡を使用した単粒子解析で複数のタンパク質構造が3.0 Åより高い分解能で決定された.300 kVに対して200 kVの粒子画像コントラストは高いため,100 kDa未満のタンパク質でも大きなデフォーカス量や位相板を使用せずに高分解能構造を得ることができる.これは,200 kVが小さなタンパク質の構造決定により適していることを意味する.しかし,これまで発表された近原子分解能構造の大多数は300 kVを使用したものである.そこで本講座では,特にコントラスト伝達関数に関連する入力パラメータを見直し,200 kVデータセットに最適なボックスサイズと粒子マスク直径を見つけるための理論と決定手順を紹介したい.また,デフォーカス分布を考慮してこの二つの設定値を最適化するだけで,200 kDa未満のタンパク質の単粒子解析で3.0 Å前後の分解能から顕著な向上を得た実例も紹介する.