2021 年 35 巻 5 号 p. 415-418
【目的】アナフィラキシーに対するアドレナリン自己注射薬(AAI)の処方が可能となって以降,不適切な取り扱いによる誤使用の報告が散見される.誤使用の発生要因を検討する目的で,当院小児科で経験した事例を分析した.
【方法】2012年2月~2021年1月に当院小児科でAAIを処方された患児の電子診療録を対象に,誤使用した人物及び年齢,性別,適応症,既往歴,有害事象,発生要因を後方視的に検討した.
【結果】期間中にAAIは246例,延べ1,333本処方され,誤使用は9件発生した.うち8件が児による誤使用であり,年齢中央値は6.5歳,性別は全例男性であった.2件は注意欠如・多動症(ADHD)がある同一の児,1件はADHD傾向にある幼児であった.身体への誤注射は4件あり,いずれも無治療で軽快した.
【考察】AAIの誤使用は,自己抑制がより未熟である学童期の男児やADHD児が自己管理する際に発生する傾向にあり,患児の発達特性を評価した上で,AAIの管理上の注意点をより重点的に指導する必要がある.