顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
特集:電池技術開発を支える顕微鏡技術
TEMを用いた硫化物固体電解質の水分劣化解析
塚崎 裕文森 茂生
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2023 年 58 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

硫化物固体電解質には有機電解液に匹敵するイオン伝導度を示す材料が数多く存在し,全固体リチウム電池の有望な候補材料として現在注目されている.しかし,本材料には大気安定性に課題がある.大気に曝すと水分と反応して有毒な硫化水素を発生し,イオン伝導度が著しく低下する.このため,硫化物型全固体電池の作製には不活性雰囲気が必須で,これが製造プロセスコスト上昇の原因となっている.耐水性に優れた硫化物電解質を開発するには,大気暴露時の劣化メカニズムの解明が重要であるが,その詳細は明らかとなっていない.そこで,耐水性改善に向けた材料設計指針を得るため,硫化物固体電解質を大気暴露させた際の劣化プロセスを透過型電子顕微鏡(TEM)により調べた.本稿では,イオン伝導性に優れるアルジロダイト型硫化物固体電解質Li7-xPS6-xClxを取り上げ,本物質の水分劣化解析および大気フロー環境下でのその場TEM観察に関する最近の研究成果を紹介する.

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© 2023 公益社団法人 日本顕微鏡学会
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