顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
58 巻, 1 号
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特集:電池技術開発を支える顕微鏡技術
  • 秋田 知樹
    2023 年 58 巻 1 号 p. 2
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
  • 小林 俊介
    2023 年 58 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー

    リチウムイオン二次電池は現代社会において必要不可欠な電気化学デバイスであり,低炭素社会へ向けさらなる性能向上が求められている.リチウムイオン二次電池を構成する各材料の内部や各材料間には数多くの界面が存在し,リチウムイオンはそれらの界面を移動し充放電が行われる.電池性能を向上させるにはこれらの界面構造を設計し制御することが一つの重要な課題となる.走査透過電子顕微鏡法による原子分解能レベルでの組織観察と電子エネルギー損失分光法による組成や電子状態の計測を組み合わせた解析はリチウムイオン二次電池の界面構造や界面で生じる劣化挙動を理解する上で有効な手法となる.本稿ではこの二つの手法を組み合わせ,正極材料オリビン型リン酸鉄リチウム内部の界面と全固体電池における硫化物系固体電解質と層状系正極材料の接合界面の構造解析に関して紹介する.

  • 塚崎 裕文, 森 茂生
    2023 年 58 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー

    硫化物固体電解質には有機電解液に匹敵するイオン伝導度を示す材料が数多く存在し,全固体リチウム電池の有望な候補材料として現在注目されている.しかし,本材料には大気安定性に課題がある.大気に曝すと水分と反応して有毒な硫化水素を発生し,イオン伝導度が著しく低下する.このため,硫化物型全固体電池の作製には不活性雰囲気が必須で,これが製造プロセスコスト上昇の原因となっている.耐水性に優れた硫化物電解質を開発するには,大気暴露時の劣化メカニズムの解明が重要であるが,その詳細は明らかとなっていない.そこで,耐水性改善に向けた材料設計指針を得るため,硫化物固体電解質を大気暴露させた際の劣化プロセスを透過型電子顕微鏡(TEM)により調べた.本稿では,イオン伝導性に優れるアルジロダイト型硫化物固体電解質Li7-xPS6-xClxを取り上げ,本物質の水分劣化解析および大気フロー環境下でのその場TEM観察に関する最近の研究成果を紹介する.

  • 熊谷 明哉, 佐藤 覚仁, 堀口 佳子, 珠玖 仁
    2023 年 58 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー

    走査型プローブ顕微鏡の一種である電気化学顕微鏡技術は,ミクロスコピックな電気化学反応を分析・検証する.その中でも,ナノ電気化学セル顕微鏡(SECCM)は,開口径を制御したガラスピペットに電解液と参照電極を挿入し,測定試料表面に接近させた際に生じる微小液滴を電気化学反応セルとして利用することで反応場を制御した計測を可能とする.SECCMの動作原理とその応用を,メディエーターによる酸化還元反応,リチウムイオン脱離・挿入反応,電極触媒反応などの測定結果と共に報告する.

  • 田口 昇
    2023 年 58 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー

    試料のサイズなどの制約がより少ない走査電子顕微鏡(SEM)をベースにした化学状態分布可視化の手法として,走査型オージェ電子分光(AES)装置を用いた電子分光による材料評価をこれまで検討してきた.材料解析に一般的に活用されてきたオージェピークによるLi測定に加えて,反射電子エネルギー損失分光(REELS)を用いることでも化合物のLiを検出することが可能であり,リチウムイオン電池材料のLi評価といった応用が期待できる.一方で,データ解析や可視化のための測定スループットにおける課題が浮上しており,さらなる測定の汎用化やデータ処理の高度化のためにデータキューブの取得についても開発を行った.本研究ではそれらの現状について紹介する.

解説
  • 藤田 大介, 竹口 雅樹
    2023 年 58 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー

    代表機関として,全国11実施機関と協力しながら,文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業の微細構造解析プラットフォームを構築し,10年間にわたる最先端ナノ計測研究支援を成功裡に実施することができた.アカデミアのみならず,大企業や中小企業の研究者・技術者に対する最先端計測支援課題数は先行事業に比較して飛躍的に増大した.国内のみならず海外研究者の利用も増加し,国際的なナノ計測共用拠点として順調に成長した.国内外でのVisibilityが高まるにつれて,海外の共用施設とのスタッフ間交流も進展し,多くの研究者や技術者の人材育成にも貢献することができた.ナノプラという略称がブランドとなり,ナノテク・材料分野の研究開発基盤となるNational Research Infrastructureとして国内外に認識された.利用者の先端テーマや課題と支援者の装置や技術がかみ合ったときに非常に効率よく高いレベルの成果が創出されることが明らかとなった.

  • 須賀 三雄
    2023 年 58 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー

    生物試料の電子顕微鏡画像の解析には,注目する構造を選択的に切り出す「セグメンテーション」が必須だが,簡単な画像処理での対応は困難であるため従来は手作業で行われることが多かった.しかし,画像の3次元化や大規模化に伴い手作業での対応は困難となり,近年は複雑な画像処理に適用できるdeep learning(DL)がセグメンテーションに用いられるようになった.これにより,セグメンテーションに必要な労力は大幅に低減したが,さらなる効率改善のために,次の課題としてDLの利用に必要な教師データの準備とDL結果の校正に必要な労力の低減が浮かび上がってきた.ここでは,急速に進展するDLを用いたセグメンテーションと新たな課題への取り組みを中心に本分野の概説を試みる.また,DLを用いたセグメンテーションを開始するための参考情報やセグメンテーション以外へのDLの応用についても記載する.

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