顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
特集:新時代の生命科学・医学におけるクロススケールバイオロジーと人のネットワークの必要性
ナノ内視鏡AFMによる生きた細胞の内部観察
福間 剛士
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2023 年 58 巻 2 号 p. 55-59

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抄録

原子間力顕微鏡(AFM)は,液中で生体分子の動きを直接観察できることから,生物学分野でも重要な分析ツールとして活用されている.しかし,従来のAFMによる分子スケール観察技術の多くは,細胞外で基板上に構築したモデル系に対してのみ有効であり,生細胞内の現象を直接観察することはできなかった.我々は,この問題を解決するためにナノ内視鏡AFMを開発した.この技術では,細長いニードル状探針を生きた細胞の内部に挿入し,細胞内の構造や現象を直接AFM観察する.これまでに,細胞全体の内部構造やアクチン線維の3次元分布,細胞膜の裏打ち構造の2次元ナノ動態などが観察されている.本技術は,これまでに提案されてきた細胞内AFM計測技術とは異なり,探針を細胞内構造と直接相互作用させられるため,分子分解能観察,力学物性計測,分子認識観察などの主要なAFM計測が原理的には実現可能であり,今後,様々な細胞内現象の研究への活用が期待される.

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© 2023 公益社団法人 日本顕微鏡学会
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