日本健康教育学会誌
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原著
大学における薬物乱用防止教育の問題点とニーズ
―大学担当者を対象とした調査結果より―
高橋 佐和子荒木田 美香子
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2013 年 21 巻 2 号 p. 115-124

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抄録

目的:大学における薬物乱用防止教育について,大学側の視点から教育実施上の問題点やニーズを明らかにし,大学における薬物乱用防止対策の在り方を検討することである.
方法:全国の大学486校の薬物乱用防止教育担当者を対象に,郵送の質問紙調査による横断研究を実施した.薬物乱用防止教育の実態(実施上の問題点,取り組み,専門的組織の有無,考え方),薬物乱用事件発生の有無,大学で取り入れたい薬物乱用防止教育について調査した.解析では,コンジョイント分析を行い,薬物乱用防止教育担当者が教育方法を選択するときに重視する条件の傾向を調べた.
結果:薬物乱用防止教育担当者の89.5%が教育実施の必要性があると回答したが,教育実施上の問題点があると回答した大学は74.1%と多く,時間の制約や学生を集める困難さがあるという実態が明らかになった.大学が薬物乱用防止教育方法を選択する条件は,より多くの人数をより少ない回数で教育できることであった.しかし,自校で薬物乱用に関する事件があった大学では,薬物乱用防止を扱う専門組織があり,教育方法選択の条件では講師を重視し,授業時間内を選択する傾向があった.
結論:制約がある中で実施されている薬物乱用防止教育は,事件が発生しななければ次第に簡便な方向に流され,薬物乱用防止教育が形骸化していくことが懸念される.事件がなくても意欲的に大学全体で取り組むような組織体制作りを含め,限られた時間の中でも実施しやすい教育プログラムの開発が急がれる.

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© 2013 日本健康教育学会
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