日本健康教育学会誌
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最新号
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新年のご挨拶
巻頭言
原著
  • 中村 学, 平田 昂大, 土井原 奈津江, 平川 一貴, 安藤 穣, 伊藤 智也, 今井 丈, 齋藤 義信, 小熊 祐子, 石田 浩之
    2026 年34 巻1 号 p. 5-15
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:対象の運動施設におけるプログラムへ反映するため,運動施設の利用を希望する運動習慣のない高齢者における運動開始の促進・阻害要因を探索することを目的とした.

    方法:対象の運動施設の運動プログラム体験会に参加した60~85歳の高齢者を対象とした.混合研究法の収斂デザインを用い,体験会後に質問紙調査を実施し,運動習慣の有無と運動開始の促進・阻害要因の関連について検討した.質問紙回答者のうち運動習慣がない高齢者を対象に運動開始の促進・阻害要因について半構造化面接を実施した.得られた逐語録から帰納的アプローチによるテーマ分析を行い,質問紙と半構造化面接の結果をまとめた.

    結果:質問紙調査は59名から回答を得た(平均年齢71.8歳,SD 7.6, 女性46名).促進要因については運動習慣の有無で有意差がなく,阻害要因については「めんどうくさい」の回答割合が運動習慣なし群で有意に高かった(P=0.024).半構造化面接を9名(年齢61~84歳,女性5名)に実施し,運動開始の促進要因として運動する意欲を高める要因,運動施設を利用しようと思ったきっかけ,運動施設における指導の3つが挙がり,阻害要因として運動する意欲を下げる要因がテーマに挙がった.

    結論:対象の運動施設の利用を希望する運動習慣のない高齢者は,運動に関する不安や,目標や効果に対して,指導者のサポートを求めていることが示された.

実践報告
  • 谷内 ななみ, 佐藤 清香, 赤松 利恵
    2026 年34 巻1 号 p. 16-26
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:横浜市は,産学官連携で健康な弁当であるハマの元気ごはん弁当を販売するモデル事業を実施した.本実践報告では,本モデル事業の取組内容,従来から販売されている弁当との比較や喫食者アンケートの結果,横浜市の担当者へのインタビュー結果を報告する.

    事業内容:横浜市は,A社のスーパーマーケット51店舗にて,2023年7月1日~31日にハマの元気ごはん弁当を販売した.従来の弁当との比較には,協力店舗5店舗のデータを用いた.喫食者アンケートでは購入した理由等を,インタビューでは事業の成功要因と課題をたずねた.

    事業評価:ハマの元気ごはん弁当は,従来の弁当よりも野菜等重量が118 g多く,従来の弁当のみを販売し続けていた場合と比較し,5店舗で400 kg以上多く野菜等食材を供給できた.弁当の購入理由には,栄養バランスがよいこと,おいしそうであることがあげられた.事業の成功要因として,主に企業におけるキーパーソンの存在,ローカル企業の地域貢献意欲の大きさ,課題として,主に事例や実績の不足,限られたおかずの選択肢,健康な食品は売れないという企業の認識があった.

    今後の課題:本モデル事業は,市民の野菜等摂取量増加の観点から健康な食生活に寄与した.多くの喫食者が,ハマの元気ごはん弁当をおいしそうと回答した.今後同様の事業を進めるためには,ローカル企業やおかずの下請け企業へのアプローチが必要である.

総説
  • 枝澤 真紀, 金谷 志子, 和泉 京子
    2026 年34 巻1 号 p. 27-35
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:予防接種の対象者である子どもおよびその保護者への“Decision Aid”を活用した予防接種の意思決定に関する国内外の介入研究の文献レビューを行い,介入方法や内容,介入における課題を明らかにすることを目的とした.

    方法:データベースは,医中誌Web, Web of Science, PubMed, CINAHLを用い,検索期間を2025年3月までの全期間とし検索した.選択基準を満たす10文献を分析対象とした.分析は,研究デザイン,ワクチン,対象者,介入方法,介入内容と所要時間,アウトカム指標,結果を整理した.

    結果:対象ワクチンはHPVワクチンが最も多かった.介入内容は,【病気やワクチンの情報提供】【予防接種における価値の明確化】【予防行動への移行に向けた調整】【家族との対話の促進】【医療従事者との対話の促進】【グループでの不安や疑問の共有】の6つがあった.介入成果として,意思決定の葛藤の低下,情報の獲得・知識の向上,懸念や不安の軽減などがあった.これらは,“Decision Aid”を活用した介入であった.

    結論:予防接種の対象者である子どもおよびその保護者への意思決定支援を介入にて行った研究は少なく,長期的な支援効果は評価されていない.今後,日本では意思決定の質の向上,懸念や不安などの心理的要因の軽減のための構成内容や効果評価に着目した意思決定支援の介入研究を蓄積する必要がある.

特集:日本におけるヘルスプロモーション・アドボカシー—実践知の体系化と能力開発に向けて—
  • 江川 賢一
    2026 年34 巻1 号 p. 36-44
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:日本におけるヘルスプロモーション・アドボカシーは,専門職が中心に政策に関与してきた.当事者の声が十分に反映されておらず,人材育成の枠組みも整備されていなかった.オタワ憲章に基づき,個人・地域・集団のエンパワーメントを促す基本戦略の一つとしてアドボカシーが位置付けられ,戦略的枠組みや可視化ツールも開発されている.

    目的:日本におけるヘルスプロモーション・アドボカシーの実践知を体系化し,人材育成に必要な枠組みを提示することを目的とした.

    結果:教育的介入,情報発信,政策提言,協働,社会構造変容までの多様なアドボカシー活動を抽出し,理論的モデルに基づき分類した.日本型アドボカシー人材には,課題を政策に伝える「アドボカシー(advocacy)」,行動を可能にする「支援的介入(enable)」,多様な主体をつなぐ「調整・連携(mediate)」の能力が求められ,これらは実践経験や可視化ツールの活用を通じて段階的に育成されることが示された.また,当事者参画や協働的研究が能力開発に有効であることが確認された.

    結論:日本型アドボカシーでは,多様な関係者と当事者が参加し,データに基づいた課題解決型政策を検討できる環境が必要である.教育・研修・現場実践に体系的に能力開発を組み込み,アドボカシーの理念を社会に定着させることが,持続可能で公正なヘルスプロモーション推進の鍵である.

  • 齋藤 宏子, 阿部 計大, 江川 賢一, 春山 康夫, 中村 正和
    2026 年34 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:日本健康教育学会アドボカシー研究会では,日本におけるアドボカシー実践の好事例を学ぶため,実務家を招いたセミナーを2021年5月15日に開催した.本特別報告は,その概要と実践されたアドボカシーおよび政策を紹介する.

    内容:貧困の課題解決に向け,民間・行政・研究者の立場からアドボカシーとロビイングを実践してきた社会活動家・湯浅誠氏を講師に迎え,「コロナ禍と児童貧困問題—社会活動家・湯浅誠氏から学ぶアドボカシーの実際—」をテーマにオンラインセミナーを開催した.講演後に質疑応答と総合討論を行い,会員および入会希望者ら52名が参加し,演後のアンケートでは33人中29人が「非常に満足した」と回答した.

    事例紹介:農林水産省による政府備蓄米のこども食堂への無償交付制度を題材に,湯浅氏と理事を務める団体によるアドボカシー実践と政策過程を検証した.

    まとめ:エビデンスの押し付けではなく,相手の立場に立った対話を通じて賛同者・協働者を広げ,アドボカシー活動の総量を高めることが政策を動かすとの示唆は,参加者のエンパワメントとアドボカシーへの関心の深化につながった.あわせて,Trevor Shilton氏が提示した「アドボカシー実践モデル」の有用性も再確認された.

  • 岩橋 恒太, 市川 誠一
    2026 年34 巻1 号 p. 51-57
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本報告は,日本のゲイコミュニティにおけるHIV予防施策の経緯を時系列で記述し,当事者参加型アプローチからコミュニティ主導型モデルへの発展として整理し,その成果と課題を検討することを目的とする.

    内容:1990年代,日本のHIV流行は都市部MSMに集中していたが,当初の研究体制には当事者が参加しておらず,効果的な介入が困難であった.研究者とコミュニティの協働は,ハッテン場調査や啓発活動を通じて始まり,その後のMASH大阪といった組織やコミュニティセンター事業の設立へと発展した.2000年代には厚生労働省の戦略研究により全国的な予防プログラムが展開され,MSM集団の「不可視化」を打破するデータが蓄積された.さらに近年は,PrEPの制度化を目指す取り組みに象徴されるように,コミュニティが主体的にニーズを把握し改善を促すCommunity-Led Monitoring(コミュニティ主導型モニタリング)が重視されている.日本のMSM対策で構築された協働モデルおよびアドボカシーの経験は,今後の多様なマイノリティの健康課題への応用可能性を示すものである.

  • 中山 直子, 岩橋 恒太, 齋藤 宏子, 松下 宗洋, 戸ヶ里 泰典, 江川 賢一
    2026 年34 巻1 号 p. 58-64
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    アドボカシー研究会では,2024年度に「地域運営学校(コミュニティスクール)を基盤とした保健活動とVUCA時代の地域づくり」をテーマに研究会セミナーを実施し,2025年度には「地域運営学校を基盤とした保健活動とアドボカシーの実際」をテーマに,第33回日本健康教育学会学術大会においてワークショップを企画した.

    本報告の目的は,コミュニティスクールにおいて実践してきた地域保健活動の内容を整理するとともに,アドボカシー研究会セミナーおよびワークショップの企画・実施内容を通して,学校を基盤としたアドボカシーの展開と課題を明らかにすることである.

    コミュニティスクールでの実践として,PTAを対象とした茶話会や健康情報に関する発信,地域住民や生徒を巻き込んだ食育・防災活動などを通じ,学校・家庭・地域の協働による健康づくりを推進してきた.また,研究会セミナーおよびワークショップでは,多様なステークホルダーが参加し,具体的な健康課題を題材にアドボカシーの視点からディスカッションを行った.

    その結果,学校を基盤とした保健活動は,地域課題を共有し,多様な知を結集するアドボカシーの実践の場となり得ることが示唆された.一方で,ステークホルダーの整理や成果の可視化,アドボカシースキル向上のための支援ツールの整備が今後の課題として示された.

特集:第33回日本健康教育学会学術大会
  • 植田 誠治
    2026 年34 巻1 号 p. 65-69
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    学校における健康教育は,幼児・児童・生徒・学生が生涯を通じて健康で豊かな生活を送るうえでの基礎を培うという特徴を有する.

    今日,学校における健康教育で育成を目指す資質・能力は,学校教育全体の課題と同様に,生きて働く「知識・技能」の習得,未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成,学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養の3つにまとめられる.そして,「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善により,質の高い学びを実現し,この3つの資質・能力を高めることが求められている.

    これら「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した学校における健康教育の授業の実際をみてわかることは,主体的な学び,対話的な学び,深い学びを実現するために,様々な工夫や仕掛けがなされていることである.そして,教師の学習者に対する願いが強くあることも学校における健康教育においては重要であった.

  • 杉田 秀二郎
    2026 年34 巻1 号 p. 70-74
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    ヘルスプロモーションに関するオタワ憲章が発表されてから40年となる節目の前年に,健康教育とヘルスプロモーションの関係性について再考することを目的として,シンポジウムを行った.

    武見ゆかり氏(日本健康教育学会理事長)は,健康教育学会と称しているが当初からヘルスプロモーションの内容は入っていると語り,その実践のために複数の研究会を学会内に設けていると説明した.

    齊藤恭平氏(日本ヘルスプロモーション学会理事長)は,ヘルスプロモーションとは巨大なアンブレラコンセプトであり,そこには基本的な社会科学の上に健康教育学,健康社会学,健康心理学があり,健康経済学や健康政策学もエビデンスに基づいて進める必要があると述べた.

    指定発言の湯浅資之氏(順天堂大学)は,ヘルスプロモーションという言葉が登場する前は健康教育にヘルスプロモーションの内容が含まれていたと解説し,現在の両者の関係は「ヘルスプロモーション」戦略にとって「健康教育」は必要不可欠な戦術である,と指摘した.

    質疑応答では,最近は健康の商業的決定要因に与える影響が注目され,さらにCSR(Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)から住民の健康に企業が貢献するというCSV(Creating Shared Value: 共通価値の創造)へと変わってきていることが提起された.

    このシンポジウムを通して,両者の関係性を問うことそのものに加えて,今後は何が必要か,何ができるかを考えていくきっかけになったのではないだろうか.

特集:第25回IUHPE国際会議報告
  • 内山 有子
    2026 年34 巻1 号 p. 75-78
    発行日: 2026/02/28
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:近年,日本の子どもたちは不登校,自殺,視力低下,ネット依存症等の健康問題を抱えている.これらの問題を解決し,健康を保持増進するために,日本ではほぼ全ての学校に保健室が設置され養護教諭が配置されている.そこで,子どもの健康を保持増進する養護教諭の仕事を国際社会に発信しているNNYJ(National Network of Yogo Teachers in Japan)が,第25回IUHPE世界会議で開催した養護教諭の職務に関するワークショップについて報告する.

    活動内容:新型コロナウイルス感染症の流行が収束した後の日本で顕著になった子どもの健康問題についてデータを用いて説明し,これらの問題を解決するために養護教諭が行っている学校保健活動を紹介した.参加者から「肥満や不登校が増えている理由」「養護教諭や保健室の学校保健における役割」「日本の養護教諭免許状取得のカリキュラム」などに関する質問があった.また,「各国が抱える子どもの健康問題」に関する情報交換を行い,世界中で学校保健に関する活動をしている人々との交流の場となった.

    まとめ:養護教諭という職種は日本独自のものであり,世界には類をみない.スクールナースと養護教諭の違いは,養護教諭は「教育職員」であり「医療従事者」ではない点にある.この点を踏まえ,養護教諭は世界で学校保健に従事する人々とともに,今後の学校保健活動に従事していく必要性が示唆された.

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