抄録
0.3%C炭素鋼圓〓形試驗片の燒入條件を種々變えて燒入したのにつき,G.Sachsの穿孔法を用いて算殘留應力を測定し,その結果をH.Biihler及びその共同者が行つたFe-Ni合金に關する研究結果と比較して熱應力と變態應力が殘留應力の上に如何に作用しているかに就て檢討したところ,炭素鋼の場合にもe-Ni合金の時と同樣變態應力は熱應力と反對の向きに作用し,殘留應力曲線に生じている凹みは變態應力の影響であることが判明した.しかして適當な燒入方法を採用すれば熱應力と變態應力を互に打消し合うように重疊せしめ殘留應力を極めて小さくなし得ることを實驗により示した.また油燒入が水燒入に比して極めて殘留應力の小さい理由に關し説明を加えた.