近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 15
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多周波数インピーダンス法を用いた大腿部体組成評価
‐超音波診断装置より求めた筋厚との関連‐
*井上 拓也大畑 光司山田 陽介市橋 則明
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抄録
【目的】生体電気抵抗法(bioelectrical impedance method:以下BI法)は、生体に微弱な交流電流を通電して抵抗を測定し身体組成を評価するものであり、単周波数BI法と多周波数BI法がある。BI法による測定は単周波数BI法での測定が一般的で、多周波数BI法での測定は少ない。多周波数BI法の特徴は細胞内液抵抗と細胞外液抵抗を別々に測定できることであり、心臓手術を含めた外科手術後患者などの身体組成評価法として有効とされている。しかし、多周波数BI法を使って四肢の身体組成を評価した報告は少なく、さらに多周波数BI法と筋厚との関連についての報告はほとんどない。
 本研究の目的は、多周波数BI法により求めた大腿部の細胞内液量(intra-cellular water:以下ICW)、細胞外液量(extra-cellular water:以下ECW)と大腿前面の筋厚との関連について検討することである。
【対象】大学ラグビー部に所属する男性17名(平均年齢20.5±1.2歳)を対象とした。対象者には本研究の目的を説明し同意を得た。
【方法】ICW、ECW及び筋総体積(total body water:以下TBW)の測定には多周波数方式体脂肪計(積水化学工業社MLT-30)を用いた。計測部位は右大腿部とし、電流電極を手背中央部・足背中央部の2箇所に、電圧電極は上前腸骨棘・膝関節裂隙-腓骨頭間の2箇所に貼付した。ICWとECWを足し合わせたものをTBWとして、TBWに対するICWの水分比率(ICW/TBW)を算出した。筋厚の測定には、超音波診断装置(GE横河メディカルシステム製)を用いた。測定部位は外側広筋と中間広筋を含む大腿外側部(以下:外側部)、大腿直筋と中間広筋を含む大腿中央部(以下:中央部)の2箇所とし、いずれも右側のみとした。
 ICW、ECW、TBW、ICW/TBWと各筋厚との関連性を調べるためにPearsonの相関係数を求めた。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】ICWと外側部の筋厚(r=0.66,p<0.01)、TBWと外側部の筋厚(r=0.60,p<0.05)、ICW/TBWと外側部の筋厚(r=0.71,p<0.01)は有意な相関を示したが、ECWと外側部の筋厚(r=-0.13)において相関はなかった。また、ICWと中央部の筋厚(r=0.54,p<0.05)、ICW/TBWと中央部の筋厚(r=0.60,p<0.05)は有意な相関を示したが、TBWと中央部の筋厚(r=0.48)及びECWと中央部の筋厚(r=-0.17)において相関はなかった。
【考察】ICWは筋細胞量を反映しており、ECWは細胞間隙にある水分量を反映する。つまり、ICWは筋実質の量を表し、ECWは筋の実質以外の水分量を表すと言える。よって、ICWが筋厚と有意な相関を示す一方で、ECWは相関を示さなかったものと考えられる。本研究より、多周波数BI法は大腿部のみの測定であっても、筋厚との関連性があり、本評価法の妥当性が示唆された。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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