近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 36
会議情報

中等度負荷の上肢運動が免疫機能に及ぼす影響
*木下 利喜生古澤 一成山中 緑幸田 剣中村 健神埜 奈美上西 啓裕小池 有美三宅 隆広芝 寿実子山本 義男田島 文博
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抄録
【目的】
 これまでの研究により運動が免疫機能に影響を与える事が分かっている。高強度負荷運動では運動直後にNatural killer cell activity(以下NKCA)が上昇し、運動終了後に運動前値より低下(open window)、その後、回復していく事が知られている。運動時、NKCA活性化に関与する物質として、カテコールアミンとインターロイキン6があり、抑制にはコルチゾールとプロスタグランジン等が影響するといわれている。しかしその機序については不明な点が多い。またこれまでの研究は下肢運動によるもので上肢運動による影響は不明である。
 今回、臨床で容易に活用できる中等度負荷上肢運動が免疫機能に及ぼす影響を検討する目的で、健常者を対象にハンドエルゴメーター運動を施行した。その運動前後で血液を採取し、免疫機能の指標である白血球数とNKCA、また調整因子の代表としてノルアドレナリンとコルチゾールを測定し、検討を試みた。
【方法】
 被検者は健常男性4名とし、運動負荷はハンドエルゴメーターで行った。負荷設定は最大酸素摂取量の測定を行ない、その60%を運動強度とした。運動時間はリハ施行1単位に相当する20分間とした。プロトコールは30分間安静坐位の後、同肢位にて最大酸素摂取量の25%負荷で4分間のウォーミングアップに続き、最大酸素摂取量の60%負荷で20分間の運動を行った。採血は運動直前、運動終了直後、運動終了1時間後、運動終了2時間後に実施し、白血球数、NKCAとノルアドレナリン、コルチゾールの測定を行った。
【結果】
 白血球数は運動直後において有意に上昇、その後、運動前値付近まで回復した。NKCAは運動直後で有意に上昇、1時間後には運動前値よりも有意に低下し、2時間後には運動前値付近まで回復した。ノルアドレナリン、コルチゾールは運動直後に有意に上昇し、その後は運動前値まで回復した。
【考察】
 今回の結果、最大酸素摂取量の60%強度で上肢運動をわずか20分間行うだけでNKCAが上昇し、1時間後には運動前値よりも有意に低下する事が判明した。また、白血球数、ノルアドレナリンとコルチゾールは運動直後に上昇し、その後に運動前値までの回復をみせた。これは、これまでのより長時間で、高強度負荷下肢運動をした際の報告と同様である。NKCAが低下した機序は、この研究では明らかに出来ないが運動直後はカテコールアミンの作用が、1時間後はコルチゾールの作用がそれぞれ上回ったためと考える。今回の結果は我々が運動療法を行う上で、免疫機能も考慮した適切な運動強度と時間を設定する際の指標となるものと考えられた。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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