近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 58
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持続的なランニングが身体機能や動作能力に及ぼす影響
*熊崎 大輔東 麻史大工谷 新一
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キーワード: ランニング, 疲労, 競技復帰
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抄録
【目的】 ACL再建術後における競技復帰の許可基準は、筋力の回復や動作の習熟により判断されることが多い。しかし、競技復帰を果たした症例でも、実際の現場では獲得された身体機能や動作能力が発揮し続けられるかどうかは明らかではない。今回、持続的な運動による疲労が身体機能や動作能力にどの程度影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。 【対象と方法】 対象を、運動習慣がない健常男性20名(平均年齢25.2±3.2歳、平均身長172.2±6.2cm、平均体重67.9±8.5_kg_)とし、血中乳酸、等速性筋力を測定した。測定の手順は、準備運動・等速性筋力測定・乳酸測定・トレッドミルでのランニング・乳酸測定・等速性筋力測定・整理運動とした。乳酸測定は、KDD社製簡易血中乳酸測定器ラクテート・プロ LT-1710を使用した。等速性筋力は、酒井医療社製BIODEX SYSTEM3を使用し、利き足の膝関節伸展屈曲筋力を角速度60d/sを5回、180d/sを10回で測定した。今回、課題運動は20分のトレッドミル上のランニングとした。UNISEN.INCのSTAR TRAC 2000を使用し、ランニングスピードは主観的運動強度(RPE)で「ややきつい」から「きつい」と感じられるスピードとした。統計処理は運動前後の各測定値の比較を対応のあるt検定により行った。なお、有意水準は5%未満とした。 【結果】 ランニングスピードの平均は10.4±0.9km/hであった。各測定値の平均は、運動前後でそれぞれ、血中乳酸5.2±1.3mmol/l、11.6±4.6mmol/l、等速性筋力60d/sで伸展321.1±47.0%BW、304.2±53.0%BW、屈曲で160.4±17.4%BW、148.6±23.3%BWであった。同様に、180d/sでは伸展208.8±21.3%BW、210.5±22.8%BW、屈曲121.0±11.9%BW、119.8±13.4%BWであった。各測定値の比較においては、運動前後で血中乳酸値が有意に増加し、60d/sでの膝伸展と屈曲筋力が有意に低下した(P<0.05)。 【考察】 主観的運動強度の設定と乳酸値の増加から、20分のランニングで身体的な疲労を作ることができたと考えられる。この環境下では、発揮される筋力が低下し、その筋力発揮により遂行される動作にも影響がでる可能性が示唆された。低角速度での筋力が低下し、中角速度での筋力に変化がみられなかったことから、持続的なランニングで疲労がおこっている状況では、ランニングなどの軽い運動は継続することが可能であるが、ダッシュやストップ、ジャンプといった瞬発力を要する動作や、身体を支持するような動作が普段どおり制御できない可能性が考えられた。ACL再建術後には、疲労による身体機能や動作能力への影響も考慮して競技復帰を判断しなくてはならない。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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