近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 21
会議情報

立位姿勢での側方体重移動が内腹斜筋と中殿筋の筋活動に及ぼす影響
*井上 隆文中道 哲朗山口 剛司鈴木 俊明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
歩行の立脚中期にトレンデレンブルグ徴候を呈する症例には、中殿筋の筋力強化練習を用いられることが多い。しかし臨床場面では、中殿筋の筋力が向上してもトレンデレンブルグ徴候が改善しない場合を度々経験する。このような場合、我々は、立位における側方体重移動練習により体幹筋の筋活動を促すことで、歩行が改善することを経験する。側方体重移動時の体幹筋・股関節周囲筋の筋活動に関する報告は多くされているが、体幹筋と股関節周囲筋との関係ついて検討した報告は散見される程度である。そこで今回は、トレンデレンブルグ徴候を呈する症例の運動療法を検討する前段階として、健常者を対象として立位における側方体重移動時の体幹筋と中殿筋の筋活動について検討したので報告する。
【対象と方法】
対象は、整形外科学的・神経学的に問題のない健常男性7名とした。運動課題は、開始肢位を安静立位とし、音刺激の合図で利き脚側(右下肢)に側方体重移動を行わせた。運動課題中の規定は、体幹・骨盤の回旋ができるだけ起こらないようにし、両肩峰を水平に保持させ、視線は前方を注視させた。また、移動側・非移動側足底は、運動課題時に床から離れないように接地させた。側方移動距離は、上記の規定内で各被験者が最大に移動できる距離とした。そして最大移動した後、開始肢位である立位姿勢に戻るまでを1施行とし、計3施行測定した。測定項目は、COP(足底圧中心 Center of Pressure)と移動側中殿筋、両側内腹斜筋、両側外腹斜筋、両側腰背筋群の筋電図波形を記録した。分析方法は、運動課題中のCOP軌跡の時間的変化と、それに伴う導出筋の筋活動パターンを分析した。なお、研究実施に関して被験者に了解を得た。
【結果及び考察】
COPは側方体重移動の開始に伴い、移動側ヘ変位した。移動側の内腹斜筋は、COPの移動側変位初期から活動し、その直後に移動側中殿筋の活動がみられた。Snijdersらは、荷重に伴う仙腸関節の剪断力に対し内腹斜筋は仙腸関節を安定させる機能があると報告している。本研究の運動課題では、COPの移動側変位に伴い、移動側下肢への荷重量が増加するため、仙腸関節に生じる剪断力は増加すると推測される。これらより、移動側内腹斜筋は、側方体重移動初期から仙腸関節を安定させる目的で活動したと考えられる。また移動側中殿筋は、COPの移動側変位に伴い、移動側股関節の内転を制動する目的で活動し、骨盤の水平位保持に関与したと考えられる。本研究結果から、トレンデレンブルグ徴候を呈する症例に対し、側方体重移動練習を実施する際は、移動側中殿筋により骨盤を水平位に保持することに加え、側方体重移動開始初期から移動側内腹斜筋の筋活動により仙腸関節を安定させることが重要になると考えられる。

著者関連情報
© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
前の記事 次の記事
feedback
Top