近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 23
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加齢による下肢身体組成の変化
-多周波数生体電気インピーダンス法を用いた測定-
*井上 拓也池添 冬芽永井 宏達田中 武一木村 みさか坪山 直生市橋 則明
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抄録

【目的】多周波数生体電気インピーダンス法では,部位別の細胞外液量(extracellular water:ECW),細胞内液量(intracellular water:ICW)の測定が可能であり,体肢において細胞外液量は間質液・血漿などの液体成分量を,細胞内液量は筋細胞量を反映すると考えられている.本研究の目的は,加齢に伴う下肢の身体組成変化を明らかにすること,および加齢に伴う身体組成の左右差について明らかにすることである.
【対象と方法】若年女性16名(平均年齢26歳),前期高齢女性16名(平均年齢67歳),後期高齢女性20名(平均年齢82歳)を対象とした.対象者には本研究の目的を説明し同意を得た.身体組成の測定には多周波数インピーダンス計(MLT-30,積水化学工業社)を使用し,背臥位で肩・股関節を30°程度開いた肢位で測定した.対象者の体液バランスの変動を取り除くために,5分程度安静にした後,両側の大腿部,下腿部の計4箇所のインピーダンス値を測定し,身体組成値(ECW,ICW)を算出した.一元配置分散分析により年齢群間での体重,身体組成値(左右平均)の違いを分析した.また,身体組成値の左右差を検討するため,ECW・ICWそれぞれの左右差の割合を算出し,ECW・ICWの違いと年齢群間の違いの2要因に対する二元配置分散分析を行った.
【結果と考察】分散分析の結果,体重と大腿・下腿部のECWには年齢群間で有意差は認められなかった.大腿・下腿部のICWはともに年齢群間で有意差が認められ,多重比較の結果,後期高齢女性(大腿:2094.2±659.6ml,下腿:445.9±133.2ml)は若年女性(大腿:2805.6±366.4ml,下腿:672.5±122.1ml),前期高齢女性(大腿:2609.1±523.1ml,下腿:593.0±123.4ml)に比べ有意に低い値を示した.左右差に関してECW・ICWの違いと年齢群の2要因に対する二元配置分散分析を行った結果,大腿・下腿部ともにECWとICWの違いによる有意差が認められ,ECWよりICWの左右差の方が有意に大きかった.また,年齢群間の違いについても,大腿・下腿部ともに有意差が認められ,大腿部では若年女性に比べ後期高齢女性の左右差は有意に大きく,下腿部では若年女性に比べ前期高齢女性,後期高齢女性で左右差が有意に大きくなった.本研究の結果から,細胞外液量は加齢による影響を受けないが,筋細胞量を主に反映するとされている細胞内液量は大腿・下腿部ともに加齢による減少がみられること,また身体組成値の左右差についても筋細胞量の左右差の方が大きく,さらに加齢により左右差が拡大することが示唆された.

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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