近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 33
会議情報

不安定板上での立位バランス練習における短期学習効果の検討
-若年者と高齢者の違い-
*小栢 進也池添 冬芽曽田 直樹木村 みさか市橋 則明
著者情報
キーワード: 不安定板, 学習効果, 高齢者
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】不安定板を用いた姿勢制御練習は足関節捻挫後の治療や高齢者の転倒予防に対して用いられる。高齢者は新しい環境に適応することが困難と言われており、若年者と高齢者の学習効果の違いを検討することは重要であると考える。本研究の目的は、不安定板上での立位保持中の動揺量を測定し、課題反復による短期学習効果を若年者と高齢者で比較することで、短期学習効果の違いを明らかにすることである。
【方法】対象は若年者22名(23.0±2.6歳)、地域在住高齢者29名(70.1±3.4歳)とした。対象者には本研究の内容を十分説明し、同意を得た。不安定板はディジョックボードプラス(酒井医療製SV-200)を用い、傾斜方向を前後方向のみに制限した設定にて15秒間の立位保持課題を5回行った。両足部は30cm開脚位、開眼にて1m前方の指標を見るようにさせた。不安定板をできるだけ傾斜させないようにして立位保持を行うよう指示し、各試行間には20秒程度の休憩をはさんだ。データ解析には始めの5秒間を除いた10秒間の値を用いた。水平からの傾斜角度をサンプリング周波数40Hzでコンピュータに取り込み、この値から前後方向の平均傾斜位置(平均変位)を求め、この平均変位を基準とした平均傾斜角度変動域(角度変動域)を算出した。統計解析には若年者と高齢者の群間および試行回数による変化を検討するため、二元配置分散分析を用い、交互作用を認めた場合には若年者・高齢者それぞれで一元配置分散分析および多重比較を行い、試行回数による変化を検討した。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果と考察】平均変位は二元配置分散分析の結果より試行数に有意な変化を認め、反復回数が増えるにつれて前方へ移動する傾向にあった。群間による変化および交互作用は認められなかった。また、角度変動域は若年者では試行を重ねるにつれて減少し、1回目から2回目の減少量が最も大きかった(1回目1.37°、2回目0.91°、3回目0.89°、4回目0.89°、5回目0.87°)。一方、高齢者の角度変動域は1回目から2回目で増加し、3回目以降は減少に転じた(1回目2.02°、2回目2.42°、3回目1.88°、4回目1.92°、5回目1.69°)。二元配置分散分析の結果、群間および試行回数ともに主効果が認められた。また一元配置分散分析より、若年者・高齢者ともに試行回数による有意な変化を認め、多重比較より、若年者では試行1回目が2,3,4,5回目と比較してそれぞれ有意に高い値を示したのに対して、高齢者では2回目と5回目との間のみ有意差を認めた。若年者は一度経験した課題に対して、次の試行で即時的に学習効果が現れるのに対し、高齢者は学習効果が現れるまでには回数を要することがわかった。高齢者が比較的難易度の高い姿勢制御練習を行う際には、多くの反復回数が必要であると示唆された。

著者関連情報
© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
前の記事 次の記事
feedback
Top