近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 54
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心不全患者のADL制限と歩行能力について
*竹嶋  宏剛新谷 圭亮藤井 幸子中島 敏貴白 亮杉島 裕美子
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抄録
【目的】
当院の心臓リハビリテーション(以下、心リハ)では、心不全患者の依頼数が他の心疾患と比較して多く、ディコンディショニングの改善のためにも歩行能力の改善が必要である。そこで心不全患者のADL制限と歩行能力ついて調査し、その関係について検討した。
【方法】
平成20年4月1日~平成20年7月1日までに心リハ開始となった18名の内、開始時及び2回目の歩行テストが可能であった13名(男性12名、女性7名)、平均年齢78.5歳を対象とした。上記13名をADL制限群(以下、制限群)とADL非制限(以下、非制限群)の2群に分けて検討した。心機能については心エコー検査から左室駆出率Ejection Fraction(以下EF)、血液検査より脳性ナトリウム利尿ペプチド Brain natriuretic Peptide (以下 BNP)の2項目を使用、歩行距離については6分間歩行、ADLについてはBarthel Index を使用した。
【結果】
制限群、4名(男性2名、女性2名)平均年齢85歳、EF 0.46~0.55、BNP235pg/ml~2000pg/ml、開始時歩行距離0m~5m、開始時Barthel Index 平均41点、2回目歩行距離10m~61m、2回目Barthel Index 平均71.8点、歩行距離の改善は平均31.2m(10m~60m)。
非制限群、9名(男性5名、女性4名)平均年齢66.8歳、EF0.45~0.69、BNP80pg/ml~1177pg/ml、開始時歩行距離0m~372m、開始時Barthel Index 平均89.1点、2回目歩行距離50m~423m、2回目Barthel Index 平均98.9点、歩行距離の改善は平均74.6m(-31m~272m)、平均歩行速度は37.2m/分、Time Up and Goテストは平均15.9秒。
上記の結果より、ADL制限が大きい場合にBNPが高値を示す傾向があり、BNPと歩行距離にも弱い相関(r=0.406)があることが分かった。また、歩行能力とADLについてはやや強い相関(r=0.576~0.684)を示す事あることが分かった。
【考察】
心不全患者においては、高齢でBNPが高値を示す場合にADL制限、歩行困難を示す傾向があり、ADL改善が難しいケースでは、獲得出来る歩行距離が短くなる傾向が示唆された。
しかし、ADL制限がある場合でも、改善が期待出来る症例においては、歩行能力の改善が期待できると考えられる。
一方、ADLに制限が残存しない心不全患者にておいては、開始時歩行距離が186m、平均歩行速度は31.1m/分、獲得歩行距離は74.6mと6分間歩行においても改善が認められた。Time Up and Goテストでは、6分間歩行テスト可能患者であっても認知症を伴う症例では、より多く時間が掛かる傾向あり、ADL制限群では計測不可であった。
【まとめ】
心不全患者においては、ADL拡大を図ると同時に歩行能力の向上が必要であると考えられる。
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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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