近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 68
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脊椎圧迫骨折の圧潰率と理学療法介入について
*山口 恵央森川 明田中 一成(MD)
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抄録
【目的】脊椎圧迫骨折の保存的治療では,ガイドラインがなく,体幹固定方法やリハビリテーション開始時期についても一定の見解がないのが現状である.圧迫骨折の保存的治療は,椎体圧潰の進行に留意する必要があり,圧潰が進行すると変形などから姿勢不良となり,慢性疼痛や転倒リスクにもつながる. 今回,脊椎圧迫骨折後,ダーメンコルセット(以下ダーメンとする)固定を用いて理学療法の介入を行った症例の椎体圧潰の進行について経時的に調査したので報告する.

【対象】新鮮脊椎圧迫骨折受傷後,保存的に加療され,疼痛の軽減後にダーメン着用下に立位,歩行などの理学療法介入を開始した21名(男性5名,女性16名).受傷部位の内訳はTh10,Th11が1名,Th12が6名,L1が6名,L2が5名,L3が2名であった.平均年齢は78.7歳(50~90歳)であった.

【方法】医師の指示で撮影した単純X線側面画像を利用し,受傷直後と約3ヶ月後の椎体圧潰変化を検討した.椎体の前方高と後方高を測定し圧潰率としてパーセンテージで表した.圧潰進行に影響を及ぼすと思われる因子として,年齢,性別,部位,介入時期について検討した.年齢は75歳以上の後期高齢者群と75歳未満の群,部位はTh12,L1,L2の好発部位群,その他部位との圧潰率を比較検討した.受傷直後と3ヶ月後の脊椎圧潰率変化の相関については,対応2サンプル平均検定,年齢,性差,好発部位での相関については,Mann-Whitney検定を用いて統計学的検討を行った.危険率5_%_以下を有意差ありとした.

【結果】受傷後3ヶ月で,全症例の平均圧潰率は10_%_であった.脊椎圧潰率は3ヶ月で有意に低値を示し,圧潰は進行していた.75歳以上と75歳未満では,圧潰進行に有意差はなかった.性差に有意差はなかった.また部位による圧潰率にも有意差は認められなかった.介入時期は受傷後より,平均7日であった.

【考察】脊椎圧迫骨折に対する保存治療において,ダーメンによる体幹固定では,椎体の圧潰は進行することがわかった.圧迫骨折後の体幹固定の方法には,ギプス固定の他,硬性や軟性コルセットなどがあり,利点と欠点があるが,これらの選択基準について明確なガイドラインはない.特に内部疾患の合併症や脊椎変形を持つ高齢者は,強固な固定が,ADLやQOLにつながるとは限らず,体幹の固定性を犠牲にしてでも,早期の離床を促す方が廃用予防の観点から有利な場合もある.しかし骨折後の椎体変形による慢性腰痛や遅発性神経麻痺などの後遺症の出現にも留意すべきであり,脊椎圧迫骨折に対する保存的治療の難しさがある.理学療法の実施にあたっては,20日程度の安静臥床でも圧潰が進行すると言われ,疼痛の程度や椎体変形の進行のしやすさ,また患者の活動性を考慮した総合的な検討が必要である.
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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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