近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 7
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等尺性収縮を用いた右母指対立運動の運動イメージが脊髄神経機能の興奮性に与える影響
*鬼形 周恵子鈴木 俊明谷埜 予士次米田 浩久高崎 恭輔塩見 紀子谷 万喜子
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抄録

【目的】第43回日本理学療法学術大会において、等尺性収縮を用いた左母指対立運動の運動イメージが左母指球筋に対応した脊髄神経機能の興奮性に与える影響をF波により検討した。今回、右母指対立運動イメージにともなう右母指球筋に対応した脊髄神経機能の興奮性をF波を用いて検討した。
【方法】対象は健常者6名(男4名、女2名)、平均年齢36.6歳とした。被検者は全例右利きである。被検者を背臥位とし、右側正中神経刺激によるF波を右母指球筋より導出した(安静試行)。F波刺激条件は、刺激頻度0.5Hz、刺激持続時間0.2ms、刺激強度はM波最大上刺激、刺激回数32回である。次に、右側母指と示指によりピンチメータを用いて最大の50%のピンチ力で対立動作を練習させた。その後、センサーは軽く把持した状態で50_%_収縮をイメージさせた状態(運動イメージ試行)とピンチメータのセンサーを軽く把持した状態(センサー把持試行)で右母指球筋よりF波を測定した。F波測定項目は、出現頻度、振幅F/M比、立ち上がり潜時とした。なお、研究に実施に関しては被検者の了承を得た。
【結果】振幅F/M比は、一元配置分散分析では有意な変化を認めなかった。このため対応のあるt検定を用いてセンサー把持試行、運動イメージ試行を安静試行と比較した結果、増加を認めた(p<0.05)。出現頻度、立ち上がり潜時は各試行での差異は認めなかった。
【考察】運動イメージに関する研究は諸家により行われている。経頭蓋磁気刺激を用いた運動誘発電位やSPECTなどを用いた研究では、運動イメージは運動野、補足運動野、運動前野、帯状回の大脳皮質レベルの興奮性は増加させるといわれている。しかし、運動イメージが脊髄神経機能の興奮性に与える影響に関する研究では、運動イメージにより脊髄神経機能の興奮性が増加するという報告と変化ないとの報告がある。本研究では、センサー把持試行と運動イメージ試行は安静試行と比較して振幅F/M比に有意な差を認めた。これは、右母指と示指の対立運動の運動イメージで右母指球筋に対応する脊髄神経機能の興奮性が増加することを示唆している。また、運動肢位を保持させるだけでも、振幅F/M比は増加傾向であることから、運動を獲得できていない患者に運動学習させる戦略として、正しい肢位を保持させて、次にその状態で目的とする運動をイメージさせることが重要であることが考えられた。先行研究において、左側でも同様な結果が報告されていることから、母指対立運動の運動肢位保持および等尺性収縮を用いた運動イメージによって、脊髄神経機能の興奮性が左右ともに増加することが示唆された。
【まとめ】右母指対立運動の運動肢位保持および等尺性収縮を用いた運動イメージは、脊髄神経機能の興奮性を増加させることが考えられた。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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