近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 75
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回復期リハビリテーション病棟における認知症老人の日常生活自立度別の在宅復帰患者の特徴
*金山  剛大平 雄一西田 宗幹永木 和載阪本 充弘中村 浩之窓場 勝之
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抄録

【目的】回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟は在宅復帰を目的とした病棟である。我々は多変量解析を用いて在宅復帰に影響を与える因子について検討し、在宅復帰するものは認知症が軽度で移動能力が高いことを報告した(金山,2007)。さらに社会的要因を考慮した追跡調査では、認知症の程度及び家族のニードが在宅復帰を決定する重要な要因であることを明らかにした。このことから、認知症を呈する入院患者の予後予測、家族との情報交換、支援体制の確立が必要であり、そのためには認知症の程度の違いによって、どのような因子が帰結に影響を及ぼすかを把握することは重要である。そこで本研究では、認知症老人の日常生活自立度(以下、認知自立度)別の在宅復帰患者の特徴について検討することを目的とした。
【対象及び方法】平成13年6月1日から平成19年6月1日に回復期リハ病棟を退院した患者544名を対象とした。リハカルテより年齢、疾患、発症からリハ開始までの期間、入院期間、リハ実施日数を調査した。また、入院時及び退院時のBarthel Index(以下、BI)基本動作、BIセルフケア、BI合計、移動形態、日常生活自立度、家族のニードについて調査し、合計16項目を調査項目とした。認知自立度から対象者を認知症なし(136名)、1(112名)、2(130名)、3(134名)、4(32名)の各認知自立度別に分類し、さらに在宅復帰となった者(在宅群)とそれ以外の者(施設群)に分類した。統計処理にはunpaired t test、χ2検定、Manwhitny U testを用い、認知自立度別に在宅群と施設群との比較をした。有意水準はそれぞれ5%とした。
【結果】在宅群の割合は認知症なしで99名(72.8_%_)、1で70名(62.5_%_)、2で60名(46.2_%_)、3で38名(28.4_%_)、4で7名(21.9_%_)であった。認知症なし、認知自立度1、2、3では在宅群はBIが高く、家族のニードが在宅希望である比率が高かった。認知自立度4では、全ての調査項目において在宅群と施設群の間に有意な差を認めなかった。
【考察】認知症が重度なものほど在宅復帰率が低下し、在宅復帰のためには家族のニードが重要であることが明らかとなった。BIは在宅群で有意に高く、認知自立度別に分類して検討すると、BIも在宅復帰へ影響を及ぼす因子として重要である可能性が推察された。今後対象者を増やし、認知自立度別での多変量解析により検討していく必要がある。一方、認知自立度_IV_では在宅群と施設群に全ての項目において有意さを認めなかった。このことより、今回の16項目の調査項目では認知自立度_IV_における在宅復帰者の特徴を明らかにすることはできなかった。食事摂取形態や栄養状態などさらに包括的な検討が必要である。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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