抄録
【はじめに】
平成20年4月より回復期病棟の入院基準に,身体・認知機能障害の重度な症例の受け入れや,看護の視点からみた障害への評価が重要視されるようになった。それに伴い,日常生活機能指標が導入されたが,当院では,開院時より回復期におけるリハビリテーションをより充実させるために,FIMを用いて,「できるADL」と「しているADL」を評価し,それぞれの差を少なくする取り組みをしてきた。今回,当院でのFIMのデータから,症例を点数別に分類し,重症度による予後予測に注目し,若干の知見を得たので報告する。
【対象】
平成17年12月から平成19年11月までの2年間の入院患者790症例とした。対象者の平均年齢は70.9歳,内訳は男性342症例,女性448症例,運動器412症例,脳血管378症例であった。
【検討項目】
FIMスコアにおける各項目の1~7点を基準とし,合計スコアが18点(1点群), 19~36点(2点群), 37~54点(3点群),55~72点(4点群),73~90点(5点群),91~108点(6点群),109~126点(7点群)と分類し、当院のリハビリテーション科のセラピストが評価した,(1)入院時と退院時のFIMの合計スコアの変化率(入院時のFIMスコアを100_%_として算出),(2)在宅復帰率,(3)疾患の比率,(4)在院日数について各群を比較検討した。
【結果】
変化率は,3点群が最も増加がみられ,138.7_%_であった。在宅復帰率は,スコアの増大に比例して増加していく傾向がみられた。また,在宅復帰症例と施設転所症例の比較では,3点群以下の症例群では施設転所症例の方が多かった。しかし,4点群以上の症例群では在宅復帰症例が施設転所症例より多くなった。さらに,5点群以上の症例群では在宅復帰率が7割以上になった。運動器と脳血管による疾患の比較では,スコアが増大するのに伴い運動器疾患の症例数が増加し,スコアが低下するのに伴い脳血管疾患の症例数が増加していく傾向がみられた。重症例による在院日数の差はみられなかった。
【考察】
今回の結果から入院時のFIMが高い軽症例,低い重症例では変化率が少なく,入院時に中等度の介助を要する3点群が,最も変化率が高く、改善の度合が見込めると予測できる。在宅復帰率では,FIMの点数が良好なほど増加するため,在宅復帰率の向上には自立度の改善が必要とも言える。疾患比については,重症例ほど脳血管疾患が多く,軽症例ほど運動器疾患が多くなる。在院日数については,患者の不安や満足度,家族の受け入れ,退院調整などが影響したと思われ,ばらつきがみられた。