近畿理学療法学術大会
第50回近畿理学療法学術大会
セッションID: 114
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病院退院後に訪問リハビリテーションが開始となった利用者における自立度調査
*玉井 晃子
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抄録

【目的】訪問リハビリテーション(訪問リハ)が依頼される症例は、入院経過はなく主にケアマネジャーを通じて直接在宅からの者と、病院退院後に移行となる者に大別される。その依頼理由としては在宅からの者は比較的改善を目的としたものが多いのに対し病院退院後の者は退院時のレベルの維持を目的としたものが多い。しかしながら、時に在宅後ADL、身体機能が改善する症例を経験する。今回病院退院後の自立度を調査する事で今後対象者への治療や改善度の予測、病院から訪問リハへの連携の際の一助となればと考える。
【方法】対象は平成21年12月31日現在、当ステーションの訪問リハ契約中の141名(小児除く)(平均年齢71.6±12.1歳)のうち病院退院後訪問リハ開始となった73名(平均年齢69.6±9.2歳)をカルテおよび担当療法士より情報を収集調査した。調査項目は入院月数、退院時(訪問リハ開始時)の自立度(自立度はBed、車椅子、歩行レベルの3段階で評価)、訪問リハ開始後の自立度変化、改善者の疾患名、年齢、訪問リハ開始後から改善までの期間、主な改善要因とする。
【説明と同意】カルテおよび担当療法士からの情報収集調査であり、処理の際には氏名の特定はせずプライバシーの保護に配慮し実施した。
【結果】退院時(訪問リハ開始時)の自立度はBedレベル18名(25%)車椅子レベル23名(32%)歩行レベル32名(43%)であった。訪問リハ開始後の自立度変化はBedレベルは18名とも変化なし(100%)。車椅子レベルは7名が歩行レベルに改善(30%)、16名は変化なし(70%)。歩行レベルは1名が車椅子レベルに悪化(3%)、31名は変化なし(97%)。自立度改善7名の疾患名は脳血管疾患3名、骨関節疾患3名(うち1名はパーキンソン氏病合併)、大腿切断および膠原病1名、平均年齢は66.1±11.6歳、訪問リハ開始後から改善までの期間は平均3.6±3.5ヶ月であった。改善要因は痛みの改善2名、関節可動域、筋力の改善1名、断端状態、筋力の改善1名、高次脳機能、筋力の改善2名、機能的な変化なし1名であった。また歩行から車椅子レベルへと悪化した1名は全身状態の悪化による体力の低下であった。
【考察】訪問リハ開始後車椅子レベル群の30%が歩行レベルへと改善しているという結果を得た。改善要因として痛み、関節可動域、筋力の改善が挙げられているが、退院時にはこれらの改善は得られないと判断されているものもあり治療技術的な面も含め今後検討されるべきものと考える。また高次脳機能障害に関しては、病院とは違い住み慣れた環境ということが在宅後の改善に影響したのではないか。そして機能的な変化のなかった者は退院時には車椅子と設定されていたが歩行を実施すると特に問題なく可能であった。より安全性を重視されたためかレベルを低く評価されていたといえる。次にBedレベル群に改善者はみられなかった。障害の重症度が高いものは在宅において自立度レベルが改善するまでの機能の回復はかなり困難なものと考える。そして歩行レベル群に関しては在宅後レベルダウンする者も多いとする報告も散見するが今回の調査では悪化は1名のみでそのほとんどは歩行が維持できているという結果を得た。 車椅子レベル群は他2群に比べ自立度変化が大きく、病院スタッフが退院後訪問リハへの移行を検討する際、退院時車椅子レベルであるというのはキーポイントの1つであると思われる。
【理学療法研究としての意義】今回の調査結果は今後訪問リハを実施する上での目標設定や病院から訪問リハへの移行を検討する際の参考となると考える。

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© 2010 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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