科学基礎論研究
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外界の存在と時間規定
カントの観念論論駁
中島 義道
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1981 年 15 巻 3 号 p. 137-141

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抄録

カントは『純粋理性批判』第2版 (1787年) において「先験的原則論4.経験的思惟一般の要請」の中に, 「観念論論駁」という一節を付け加えている。ここにカントの意図するのは, デカルトの2元論 (rescogitans, resextensa) に由来する「外界の存在証明」という難問を解決することである。
その位置は「現実性」についての説明の最後のところである。カントは第2版に次の一文を挿入することにより, 「現実性」と「観念論論駁」との橋渡しをしている。
「現存在 (Dasein) を間接的に証明しようとするこれらの規則に, だが観念論は強く反対する。ここで観念論論駁を行なうのが適当であろう。 (B274) 」「観念論論駁」のこの位置は, カントにおいては「外界の存在証明」が「現実性 (Wirklichkeit) 」という様相のレベルで問題になっているということを示している。現存在 (Dasein) は現実性 (Wirklichkeit) と同義である。この橋渡しの上で, 私の現存在 (MeinDasein) の意識から私の外の物の現存在 (Dasein einesDingesauBermir) を証明することが, カソトの目標である。
その場合, カントの視点は一貫して「時間規定 (Zeitbestimmung) 」である。ここに「感性論」における「主観の形式」としての時間とは異なった時間理解が現われている。一口で言えば, それは物理学的測定可能な時間である。本稿の目的は「時間規定を通じての外界の存在証明」というカントの試みを再検討し, それによリカントの時間理解の一端をうかがうことである。 (1)

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