科学基礎論研究
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経験主義的全体論
中山 康雄
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2002 年 29 巻 2 号 p. 61-67

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抄録

Quine (1951) の後半部は, 経験主義的全体論の構想を描いている.クワインの描いた描像は全体論の一つの形を示している.デイヴィドソンは, 概念枠と内容の二元論を否定し経験主義的でない全体論の道を取ろうとしたが (Davidson (1974) 参照), 科学活動の発展に注目する時, それがクワインの描いた全体論を超えるものとは必ずしも言えない.それは, デイヴィドソンの全体論には, 発展し変貌していく信念のダイナミズムが欠けているからであり, この点に関してはクワインの全体論の方が優れているからである.
しかし, クワインの経験主義的全体論は, この立場が取りうる一つの形態にすぎない.それは, 信念変更に関する保守主義を含んだ経験主義的全体論である.本稿では, 'ローダン (Larry Laudan) が唱える進歩主義を経験主義的全体論に取り入れることができることを示し, これにより経験主義的全体論者が複数の戦略を取りうることを示したい.

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