科学基礎論研究
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リアリティ学としての科学方法論
今田 高俊
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2002 年 30 巻 1 号 p. 9-15

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抄録
科学の目的は現象を記述し説明することにある.このことに異論をさしはさむものは誰もいないであろう.しかし, 現象を記述するとは何か, また説明するとは何かという方法論の話になると, しばしば論争の的になる.
これまで科学の方法については, 法則定立科学か個性記述科学か, 実証主義か理念主義か, 検証主義か反証主義か, などをめぐって様々な論争が展開されてきた。しかし, 私はこうした論争で展開された方法論の対立が必ずしも有益であるとは思わない.というのも, こうした方法論論争には, 認識対象のリアリティ (現実味) にかんする相容れない前提がそれぞれの立場にあるため, 議論が生産的にならないからである.普遍法則として認識できるリアリティに対して, 個別の事例であるが本質としてのリアリティを対峙したり, 具体的で経験的検証が可能なリアリティに対して, 反証できないかぎり有効な法則であるとする反証可能なリアリティを対峙したりする例がそれらである.しかし, リアリティというものは, 特定の観点から切断されるだけでは全体像が明らかにならない.科学の方法を問う場合, 方法が扱っているリアリティの全体像にまで遡って検討する必要がある.
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