オレフィンカチオンラジカルと分子状酸素の反応は、有機合成への応用、付加反応の選択性の解明等の観点から興味深い。我々は、以前から、光電子移動により発生させたオレフィンカチオンラジカルと分子状酸素の反応を検討してきたが、今回、酸素の付加により生成するペルオキシカチオンラジカルにおいて、それらが互いに異性体でない場合の熱力学的安定性を、計算化学的に見積もったので報告したい。二つのオレフィンカチオンラジカルとそれらに分子状酸素が付加したペルオキシカチオンラジカルのエネルギーをB3LYP/6-31G(d)レベルで求め、isodesmic 反応を利用して、互いに異性体でないペルオキシカチオンラジカルの相対的安定性を求めた。結果は、オレフィン炭素に結合している置換基の 電子的および立体的効果によりよく説明できた。講演では、ペルオキシカチオンラジカルのスピンおよび電荷分布と、安定性の関係についても論及したい。