共催: 日本化学会, 日本化学会中国四国支部
カルボカチオンやラジカルなどと異なり、ラジカルカチオンは、スピンと正電荷が分子内で同時に、競争的に、あるいは、拮抗して非局在化し得る特異な性質を持ち得ることから、物理有機化学の新たな展開をはかる上で有用で興味深い研究対象である。今回、オレフィンラジカルカチオンに酸素が付加して生成するぺルオキシラジカルカチオンにおけるスピンや電荷の非局在化の程度、並びに、置換基の立体および電子的効果を解明するため、フェニル基、単純アルキル基、アダマンチル基、ハロゲンなど、さまざまな官能基を持つ数多くのペルオキシラジカルカチオンのエネルギーを計算化学的(B3LYP/6-31G(d))に求め、isodesmic 反応を利用して、これらのペルオキシラジカルカチオンの基準ペルオキシラジカルカチオンに対する相対的安定性を求めた。講演では、これらのデータを元に、ペルオキシラジカルカチオンの安定性の支配因子たるスピンや電荷の非局在化の程度、置換基の立体および電子的効果について考察する。オレフィンラジカルカチオンへの酸素付加の実験結果との相関についても述べる。