北日本病害虫研究会年報
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イネヒメハモグリバエの寄生蜂
桑山 覺
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1955 年 1955 巻 Special3 号 p. 100-107

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抄録

1. 昭和29年北日本に於ける稲姫葉潜蝿の大発生に際し, 寄生蜂の存在を認めたので北海道並びに本州・東北・北陸地方から試料を蒐集して調査した結果, 5科14種の多きを数えることができた。
2. その寄生蜂の種類を列挙すると, 次の如くである。
a. コマユバチ科 (Braconidae) に属するもの3種Chorebus sp.; Merites? sp.; Opius sp.
b. ヒメバチ科 (Ichneumonidae) に属するもの1種 Hemiteles sp.
c. シリボソクロバチ科 (Proctotrupidae) に属するもの1種 Ismarus sp.
d. ゴガネコバチ科 (Pteromalidae) に属するもの2種 Trichomalus sp.; Merismus sp.
e. ヒメコバチ科 (Eulophidae) に属するもの7種 Solenotus sp.; Neochrysocharis sp.; Rhopalotus sp.; Elachertus? sp.; Mestocharis? sp.; Paracrias sp.: Asecodes sp.
3. これらのうち, 分布が広く個体数の多い有力な天敵と認められたのは, コマユバチ科に属するOpius sp. 及びChorebus sp. で, これに亜ぐのはコガネコバチ科のTrichomalus sp. である。このコマユバチ科の2種は, 最近アメリカ合衆国に於て稲姫葉潜蝿の寄生蜂として認められた2種と同属であるが, 同一種であるかどうかは未だ確定するに至らない。他の種類は個体数少なく, 従つて天敵としての価値は, 現在の知識では大きなものとは認め難い。なおヒメバチ科に属するHemiteles sp. は恐らく二次寄生蜂と見做すべきものであろう。
4. 有力な天敵と認めた寄生蜂についても, 未だその寄生性, 生態などが明かでないので, 今後, それらの点を究明することは, その他の天敵の種類或いは分布の調査と共に, 稲姫葉潜蝿の発生予知を確立する上からも必要と思われる。

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