北関東医学
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母乳栄養に関する調査 (第一報)
佐藤 ち江
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1976 年 26 巻 6 号 p. 441-446

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抄録

母乳育児の価値が再認識され, その必要性が叫ばれているにもかかわらず, 人工栄養に頼る母親が多い.そこで妊娠中及び出産をめぐる状況, 育児に対する態度等から母乳育児を阻害する要因をさぐるため調査を行なった。主なる所見はつぎのとおりである。
1) 母乳栄養は月令が進むにつれて漸減しており, これに反して人工栄養が増加している.
2) 分娩場所, 栄養方法の如何にかかわらず, 分娩後7日までの間にほとんど (94.6%) の母親は母乳を与えていた.
3 初乳を与えるまでの間, すでにミルクを飲まされていた児は半数を越えた68.9%おり, のまされていたらしい, わからないというものを加えると80.9%に及ぶ.
母乳開始までにミルクを飲んでいない児は僅か19.1%しか過ぎない.
4) 母乳栄養から人工或いは混合栄養に移行したもののうち, 母乳分泌が悪いことを理由にしているものは74, 4%である.
5) 妊娠中に母乳で育てようという意志が固かったものは, 母乳栄養の率が高い.しかし, 何とか母乳で育てようとか余り考えていないものでは母乳栄養の率は低い。
6) 母親学級への参加は調査数の1/3に過ぎず, 開催を知らなかったために参加出来なかったのは家庭にいるものが多く, 仕事の都合で参加出来なかったのは勤務者が多い.
母乳育児を推進するには, 妊娠中或いはそれ以前における母性教育の場において母乳育児に対する理解と認識を深めることの必要性を感じさせられた.
しかしこれら母性教育への参加状況は必らずしも満足なものではない.母性教育のあり方について保健所は勿論, 医療関係者やその他母と子をめぐる地域社会すべての人々が協力して考慮を払うことが母乳育児推進のために必要であると考える.

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