北関東医学
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冷水浸漬負荷試験からみた振動障害者
とくに負荷解除後, 初期の指先温回復能
永田 稔三村 清川上 哲男
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1977 年 27 巻 6 号 p. 451-459

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抄録

M営林局管内で30才以上のチエンソー作業経歴者53人について4℃冷水に左手関節までを60秒間浸漬し, 第3指掌側中央部皮膚温 (以下, 指先温と称す) の低下と, 負荷解除後の回復状況をみた.受検者の内訳は, これまでに白指発作 (レイノー症候群) が生じ, 職業性のものと認定されたもの14人 (以下, R (+) 群), これまでに白指の生じなかったもの (同, R (-) 群) 39人である.
得られた主なる成績は以下のごとくである.
1) 冷却負荷によって指先温が14℃以下に低下したものはR (+) 群7例 (50.0%), R (-) 群9例 (23, 1%) であった。これらのものの負荷解除10分後の指先温回復状況を, 負荷直前の指先温に対する回復率でみるとき, R (+) 群の7例はすべて80%未満の回復率であった.R (-) 群では3例が80%未満, 6例は80%以上の回復であった.
2) 上記の回復状況を負荷直後指先温が15℃以上であったものと比べるとき, R (-) 群はほぼ同等の回復であったがR (+) 群では14℃以下のものの回復が有意に遅延している (P<0.05).
3) 負荷解除後10分経過時まで各1分ごとに指先温を記録し作成した指先温回復曲線からはR (+), R (-) 両群を分別する所見は得られなかった.
4) 負荷解除後, 初期の指先温回復量がR (+) 群とR (-) 群では異る傾向にあることから下式によるTtを求めた.その結果, Ttが11以下のもの (回復延長者) はR (+) 群で13例 (92.9%), R (-) 群では17例 (43.6%) でR (+) 群が有意に高率であった (P<0.01).この分割によるR (+) 群, R (-) 群分別のsensitivityは92.9%, specificity56.4%であり, 計算式の簡略なことと併せてTtが有用な指数となることが推測された.
Tt= (T1+T2+T3) -3T0
T0 : 負荷終了時指先温 (℃)
T1, T2, T3 : 負荷終了後, 1分・2分・3分経過時の指先温 (℃)

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