北関東医学
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家ウサギ象牙質石灰化像に及ぼすカドミウムの影響と作用機序の検討
山田 哲司
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1982 年 32 巻 2 号 p. 115-129

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抄録

カドミウムの硬組織石灰化に及ぼす機序を知るために, 家ウサギ切歯象牙質を対象として象牙質切片上におけるカドミウムの検出と, 切歯象牙質縞模様石灰化像, 第2臼歯象牙質の成長速度に及ぼす影響および血清カルシウム, 無機リン酸濃度に与える影響をあわせ調べ, 次の成績を得た.
1) カドミウム塩を静注し, 硫化水素で飽和した塩酸よりも電離度の小さい乳酸, トリクロール酷酸, 蔭酸で硬組織を脱灰し, 硫化カドミウムに変化させ, 塩化金でカドミウム顆粒を染めると, カドミウムは黒紫色の干渉色として切片上で観察することができた.この方法による検出可能なカドミウムの最少量は1~3mg/kg前後であった.カドミウムの象牙質内沈着量はカドミウムの投与量にほぼ比例し, またその沈着量は同量の鉛よりも弱かった.この関係は, サクラミクロフォトメーターにより画かれたグラフから半定量的に示された.
2) 塩化カドミウムを5~10mg/kgl日1回連続8日皮下注すると, 切歯象牙質の縞模様石灰化像では, 構成するカルシウムのアパタイト量の減少と基質の性状に変化を生じ, また第2臼歯の成長速度も抑制された.1~3mg/kgでは縞模様象牙質の質的抑制をきたす場合と, 一過性の石灰化促進後主作用である抑制をきたす場合とがあったが, 成長速度はいずれも減少した.0.05mg/kgは石灰化に影響の少ない用量と考えられる.石灰化と関連深い血清カルシウム, 無機リン酸濃度との関係であるが, 石灰化の抑制が最初に起こり (少数例ではあるが一過性の促進をきたす場合を含む), 石灰化抑制が増強すると, 明らかな血清カルシウムの減少をきたしたが, 無機リン酸には著明な変化は生じなかった.この場合, カドミウムによる腎機能の障害も関与すると考えられた.
3) 以上の成績から, 象牙質の石灰化像に及ぼすカドミウムの作用は直接作用が主であり, 間接作用も関係すると推測した.

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