北関東医学
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電子顕微鏡による正常および去勢ラット顎下腺導管系の形態学的および形態計測的研究
四分一 泉
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1982 年 32 巻 2 号 p. 145-176

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抄録

従来より, ある種の鶴歯目顎下腺の導管部には, 性による二様性 (sexual dimorphism) の存在することが知られている.特に実験用のマウスとラットおよびハムスターの3種は, その他の超歯目の動物に比べ食習慣, 水分摂取の条件等が一定していて, 個体差の発現が少く, 普遍的な研究成績が得られ易いため数多くの研究者によって報告されている.中でも実験用マウスは, 顎下腺の性差が顕著であるため最も多く研究されている.このようなマウス顎の顎下腺に見られる性差は性ホルモンの作用によって発現することが, まず光学顕微鏡によって示されたが, 近年になると, 電子顕微鏡によってマウス下腺の導管を構成する個々の細胞に顕著な雌雄差の存在することが示された.Caramiaの研究によると雄マウスの去勢によって形態学的に完全に雌に一致するようになるわけではないというが, 最近では雄のマウスの去勢によって, 顎下腺のamylase活性が雌のそれに一致することが示された.
一方, ラットの顎下腺の性差に関する研究は, マウスにおけるほどは多くはない.当初, ラット顎下腺の雌雄差は組織学的には認識できないとされたが, ラット顎下腺のamylase活性に雌雄差の発現することは比較的早期より知られていた.MuddとWhiteによると, 成熟した雌雄のラットの顎下腺を比べると雄の場合は, 腺房と果粒性膨大部との比率がほとんど1 : 1であるのに対し, 雌ではその比率がおよそ2 : 1である.さらに成熟ラットに比べ, 生後35日の幼若ラットの場合には形態学的性差は発現せず, 果粒性膨大部の占める比率は雌雄ともに少く, 性的成熟の後に顎下腺の性差が発現することが明らかとなった.
筆者は, 正常雌雄のラット顎下腺の導管系の超微細構造を比較観察し, 腺房と果粒性膨大部の比率, すなわち果粒性膨大部の発達程度において雌雄差が存在するのみならず, 導管系を構成する個々の細胞に性差の存在することを確認した.さらに成熟雄ラットを去勢し, 導管系におよぼす影響について若干の知見を得たのでここに報告する.

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