北関東医学
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Mucocutaneous Lymph Node Syndrome (川崎病) 罹患児における冠状動脈障害の研究
-Dipyridamole負荷冠状動脈造影による血管拡張能の経時的変化について-
田端 裕之
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1990 年 40 巻 3 号 p. 249-262

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抄録

Mucocutaneous Lymph Node Syndrome (以下, 川崎病と略す) の急性期に生ずる冠状動脈 (以下, 冠動脈と略す) 拡大性病変の程度は, 急性期の冠血管障害の程度をおおむね反映していると考えられる.同時に, 血管機能の1つの指標とされるdipyridamole等の冠血管拡張剤に対する冠動脈の拡張能の障害も, 拡大の程度が強い程高度になることが認められている.この拡大性病変も経時的な観察により, 内径が8mm未満の拡大性病変は縮小してくることが多いと報告されている.しかし, 病理学的にはこれは内膜の肥厚を中心とした瘢痕形成であり, 厳密な意味での “正常化” とは異ると考えられる.このような形態的には改善がみられた冠動脈に, はたして機能的な面での回復も起ってくるのかどうかは興味深いところであり, 臨床的にも重要であると思われる.また, 形態面のみならず機能的な面からの冠動脈の検討は, 川崎病による冠血管障害をより詳細に検討し得ると共に, 長期にわたる治療計画においても1つの指針となると思われる.
筆者は川崎病罹患児22名にdipyridamole負荷冠動脈造影を平均21カ月の間隔で2回施行し, 形態学的観察を行うと同時に各時期の冠動脈拡張率を算出した.これを用いて川崎病後冠血管障害の経時的変化について検討を行い以下の結論を得た.
(1) 内径が8mm未満の冠動脈拡大性病変は, 経時的に縮小することが多かった.うち, 初回造影時の病変径が4mm未満の冠動脈では, 冠動脈拡張能の有意な改善も同時に認められた.
(2) 病変径が4mm以上であった冠動脈でも, ほとんどで有意な拡大性病変の縮小を認めたが拡張能の改善はみられず, むしろ悪化する傾向にあった.
(3) 造影上, 冠動脈径値は正常範囲内であるのに著しく拡張能の低下した部位が存在する場合は, 過去に4mm以上の拡大性病変がありそれが縮小した可能性も考慮する必要がある.
(4) 初回造影時, 形態上は異常のみられなかった冠動脈にも形態的, 機能的な経時的変化にはいくつかのパターンが認められ, 拡大性病変を生ずるには至らなかった軽度の冠動脈障害も, さらに詳細に評価することが可能と思われた.

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