北関東医学
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蟯虫症に関する研究
第I報 蟯虫卵検査法の検討
後藤 敬子
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1958 年 8 巻 3 号 p. 319-324

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抄録

前橋市内2, 3幼稚園の園児につき, 著者考案になるワゼリン法を用いてその検肛回数と蟯虫卵検出率との関係, 虫卵分布密度の左右肛囲間の比較, さらに数種検肛法の虫卵検出力の比較について実験し, 若干の検討を加えた.
1 幼稚園児30名につき, ワゼリン法による連日6回検肛による累積陽性率は93.7%であつたが, この6回までの全陽性者に対する各回毎の陽性累積率をみると, 第1回で75.9%を, 第2回検査により89.7%を検出しえ, 第3回までの検査によつて90%以上を検出しえた.したがつて本対象とほぼ類似の母集団については, ワゼリン法による連続3回検肛による累積陽性率をもつてその寄生率と考えても大過ないものと思われる.
この場合, 連続6同検肛時における各検査回毎の陽性率自身については, 各回とも大差なく, 個人別には全回とも陽性を示したものが圧倒的に多かつた.
2 幼稚園児40名につき, その蟯虫卵検出に対する精度を, 糞便検査法とワゼリン法(1回) とで比較試験した結果, 前者は後者に著しく劣るものであることを再確認した.即ち, 前者による場合の陽性者は僅か2名 (5%) であつたのに比して, 後者によるそれは22名 (55%) に達し, 後者は前者の10倍以上の検出力を示した.
3 肛囲を肛門中心を通る矢状軸により左右両部に分け, 両部における蟯虫卵分布密度を比較検討し, 両者間にはその差異はなきことを証明した (危険率5%).
4 著者考案になるワゼリン法, グリセリン法, 卵白グリセリン法をも含めた5種類の検肛法による蟯虫卵検出力につき, それらの対照として, つねにワゼリン法を被検者肛囲の右側に施行しつつ比較試験を実施した結果, 各法による卵検出率の間に有意差をみとめえない (危険率5%) ことを述べ, 併せて如上諸検査法の実用上の得失について検討した.

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