神戸市立病院紀要
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帝王切開瘢痕部妊娠の治療について
星野 達二平尾 明日香小山 瑠梨子大竹 紀子北村 幸子須賀 真美宮本 和尚高岡 亜妃今村 裕子山田 曜子北 正人
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2011 年 49 巻 p. 21-28

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抄録
[目的] 帝王切開瘢痕部妊娠は気づかれずに妊娠が継続されると,子宮破裂が起こり出血性ショックになる危険な疾患である。また,最近の帝王切開の増加に伴って報告例も増えてきている。それに伴い,帝王切開瘢痕部妊娠という概念は周知されるようになり,治療法は確立されてきたと考えられるが,いまだコンセンサスは得られていないと考えられる。今回,医療従事者が参考にしやすい治療法のコンセンサスを得る目的で,帝王切開瘢痕部妊娠に適用された最近の治療方法について検討してみた。[方法] 医療環境が均一であるわが国の症例を文献検索システムを使って集め,帝王切開瘢痕部妊娠の治療法について検討した。[結果] 最近5年間のわれわれの施設と同様の状況下にある医療機関で,治療された帝王切開瘢痕部妊娠報告例は,自験例の4例を含めて39著者による46例である。24週まで妊娠継続して,帝王切開後に膣上部切断術を行い,母児ともに経過順調な例が1例ある。妊娠継続していない例は45例である。子宮を摘出した例は5例であり,子宮を摘出しなかった例は40例である。子宮を摘出した例の内訳は,子宮温存を希望せずに最初から子宮を摘出した例が3例,経膣的に内容除去を試みたが大量出血して子宮を摘出した例が1例,詳細が不明であるが子宮を摘出した例が1例である。子宮を摘出しなかった例の内訳は,妊娠内容除去術を行ったのが26例,妊娠内容除去術を行わなかったのは14例である。妊娠内容除去術は,経膣的に21例,腹腔鏡下に3例,開腹術により1例,子宮鏡下に1例が行われた。妊娠内容除去術の前後に,MTX の全身投与,局所投与,UAE などが行われていた場合もある。妊娠内容除去術を行わない場合には,MTX の全身投与,局所投与,UAE などが行われていた。前治療で hCG が下降しなかったり,出血が減少しなかったりした場合には,次の段階の治療方法が試みられている場合が多かった。MTX の投与方法は,添付文書の絨毛性疾患に対する用法の記載どおり,1クールを5日間とし,1 日に15~20mgが投与されている場合が多かった。休薬期間は7~12 日間としていることが多かった。局所投与する場合は,胎嚢を穿刺して,内容液を吸引した後に,50mg/2mlを局注している場合が多かった。[結論] 帝王切開瘢痕部妊娠についてもっとも必要なことは,まず疾患の存在を認識し,疾患を疑うことである。次に,早期に診断することが大切である。診断できれば,危険を犯して妊娠継続を期待せずに,妊娠の中断をはかるのが安全である。治療は,診断時期,病巣の状態などにより異なる。初期であれば経腹的あるいは経膣的超音波観察下に経膣的な妊娠内容除去術手術が行われている。MTX の全身投与,局所投与,UAE などもよく行われている。状況によっては,開腹術,腹腔鏡手術,子宮鏡下手術も行われている。必要であれば,子宮摘除もためらうべきではない。いずれにしろ,さまざまな起こりえる状況を予測して,時機を逸することのないように治療法を選択するのがよいと考える。
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