抄録
AspidoliteはphlogopiteのNa置換体であり,その理想化学式はNaMg3AlSi3O10(OH)2 (Rieder et al., 1998)である.Aspidoliteは希産鉱物であり,その産出は極めて限定されている.今回aspidoliteが岐阜県春日村の接触変成岩より見出された.以下にその産状と化学組成を示す.Aspidoliteの縁はphlogopiteによって置換されている.Aspidolite-phlogopite結晶の中には,(001)劈開に沿って幅約50ミクロン以下のphlogopiteの帯が多数存在する.Aspidolite-phlogopiteは角閃石(pargasite-magnesiosadanagaite)・チタン石・方解石・柱石・燐灰石・磁硫鉄鉱・黄銅鉱と共存する.
Aspidolite-phlogopiteの化学組成をEPMAによって分析した.フォーミュラは酸素数22で計算した.鉄はすべて2価と仮定した.AspidoliteのXMg [=Mg/(Mg+Fe)]は0.90-0.92である.Na量は1.44-1.93 apfuであり,XNa [=Na/(Na+K)]は0.74-0.95である.[4]Al(4配位のAl)は2.83-2.97 apfuである.この値は,aspidolite端成分[Na2Mg6Al2Si6O20(OH)4]とpreiswerkite端成分[Na2Mg4Al2Al4Si4O20(OH)4]の[4]Alのほぼ中間的な値を示す.この特徴は,春日産aspidoliteではチェルマック型置換([6]Al[4]Al=MgSi)がかなり進行したことを示している.Ti値は常に低い(<0.11apfu).ClとFはそれぞれ<0.05 wt.%,0.08-0.23 wt.%である.
一方phlogopiteはaspidoliteに比べわずかに幅広いXMg (0.85-0.92),[4]Al (2.53-2.93 apfu)を示す.Na値は0.09-0.97 apfuで,XNaは0.04-0.48である.Ti値は<0.10 apfuである.ClとFはそれぞれ<0.01 wt.%,<0.35 wt.%である.