日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K3-22
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ヒューマイト族鉱物の構造におよぼす圧力の影響
*栗林 貴弘工藤 康弘田中 雅彦
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抄録

ブルーサイト(Br)-フォルステライト(Fo)系の鉱物は,DHMS相鉱物として知られており,高温高圧の条件下で安定に存在できることが実験的に示されている.地球深部への水のリザーバーとして,これらDHMS相が考えられているが,近年,無水鉱物にも”水”が含まれていることが報告され,議論されている.
 ヒューマイト族の鉱物(組成式,nMg2SiO4・Mg(OH)2, n=1,2,3,4)はBr-Fo系にあり,その構造中で水素は,ヒューマイト構造を特徴づける八面体中の酸素に配位し,水素結合を形成していると考えられている.水素に配位した酸素を含む配位多面体の圧縮機構は無水の配位多面体の圧縮機構と異なることが予想され,水素位置のほぼ決まっているヒューマイト型構造の圧縮機構は,無水鉱物中,例えば結晶構造が類似しているオリビン,に含まれる水に関して重要な情報を与える可能性がある.また,天然のヒューマイト鉱物に見られるOHとFの置換は,電価的には等しい置換であるが,構造的には配位多面体の結合距離などに関して大きな違いを生じさせており,OHとFの置換による圧縮機構の違いについても着目する必要がある.本研究では,これまでに得られた高圧下における構造解析データを用いて,高圧下におけるヒューマイト族鉱物の結晶構造の変化の特性を明らかにすることを目的とする.
 実験は,放射光施設(KEK,PF)を利用し,BL-10Aに設置されている垂直型四軸自動回折計および実験室に設置している四軸自動回折計(AFC-7S,MoKa,l=0.7107,50kV,40mA)を用いて回折強度の測定を行った.圧力発生には改良型ダイアモンドアンビルセルを用い,圧力媒体にはメタノールエタノール4:1の混合液を使用した.圧力はルビー蛍光法により決定した.試料には,天然のコンドロ石,ヒューム石,合成コンドロダイトを使用した.
 ヒューマイト族鉱物において,陰イオンのパッキングの程度と体積弾性率の間に正の相関が見受けられるが,同じFo-Brライン上にあるphase A相については,この相関からやや外れる傾向が見られ結晶構造の相違を反映していると考えられる.ヒューマイト族に見られる圧縮の特徴は上記のOHが配位する八面体において特徴的な違いが見受けられ,F置換された場合との圧縮率の差が大きい.また,これに関係してパッキングの程度と体積弾性率の相関についても結晶構造を支配する配位多面体,特に,八面体の配列と圧縮機構が関係していることが予想されるが,現在解析中でありこれについて発表する予定である.

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© 2003 日本鉱物科学会
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