日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K3-27
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粉末法によるX線回折データの指数付けについて
*寺門 直哉三浦 裕行
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キーワード: 指数付け
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抄録

はじめに
 粉末法による鉱物の結晶構造解析においては、得られた回折データに対する指数付けを行う事が問題となる。既存の方法では膨大な計算を繰り返す必要があり、解を得るのに時間がかかる。そこで、未知の結晶構造に対して有効となるような指数付けの方法について考察し、短時間で回折データに指数を付けることのできるプログラムの開発を目的として研究を行った。
指数付けの方法
 本研究では、短時間で全体を把握することができ、探索範囲を絞り込むことで計算時間を短縮できる可能性から、乱数を用いたモンテカルロ法について考察している。今回検討したのは以下に示す方法である。粉末法により得られた回折ピークの格子定数を、乱数により仮定し指数を付ける。指数の付けられたピークデータについて、その妥当性を検討する。妥当なものであれば、仮定した格子定数の近傍を重点的に探索してより精度の高い指数付けを行う。この際問題となるのは、格子定数を評価する指標である。指標が適切なものであれば探索範囲を効果的に絞込むことで計算を短縮化できるからである。
 指標として測定ピークの面間隔dobsからQobs=1/(dobs)2を求め、仮定した格子定数のQcalc値と比較する。ここでQobsとQcalcが十分近ければその格子定数は妥当であると判断し、ΔQ=|Qobs-Qcalc|として残差二乗和(?ΔQ)を用いて格子定数の評価を行う。既知の結晶について正方晶系と仮定して計算したところ、a軸あるいはc軸のどちらかが真の値に近い格子定数の組み合わせでは比較的良い結果が得られたことから、いくつかの組み合わせから新しい組み合わせをつくる遺伝子アルゴリズムが効果的だと考えられる。また、斜方晶系と仮定して計算したところ、同様の傾向を示したが正方晶系ほど顕著なものではなかった。これは、より精度の高い指数付けを行うにはQ値だけを用いた評価では不十分であるためと思われる。
 現在その他の評価関数と、より対称性の低い晶系について検討中である。

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© 2003 日本鉱物科学会
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