日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K4-01
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高アルカリ環境下でのモンモリロナイト溶解のその場観察
*横山 信吾筒井 政則黒田 真人佐藤 努
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抄録

はじめに
 ベントナイト-高アルカリ溶液相互作用は、放射性廃棄物処分システムの長期挙動の理解のため、現在多くの研究者によって研究されている研究課題である。ベントナイトは、人工バリアの緩衝材として、圧縮状態での使用が予定されているが、圧縮系での構成鉱物の溶解挙動は、溶出元素の移動、吸着、沈殿や間隙水の溶液化学など様々な因子が関与する複雑系であるために、その理解は非常に困難である。その上、ベントナイトの緩衝能を担うモンモリロナイトの溶解挙動ですら定量的に理解されていない。現在まで行われてきたモンモリロナイト-高アルカリ溶液相互作用に関する溶解実験では、反応セル内での溶解挙動を溶出元素の濃度測定から推論していた。本研究では、原子間力顕微鏡を用いて、モンモリロナイトの溶解挙動をその場観察し、溶解メカニズムについて明らかにすることを目的とした。
試料および実験方法
 溶解実験に供した試料は、山形県月布産モンモリロナイト(クニピア-P:クニミネ工業)で、遠心分離により0.5-1.0μmの粒子フラクションに分離採取したものである。試料は、イオン交換水によって100mg/lの分散液にして、超音波洗浄器で30分程度分散させた。分散液は、白雲母板上0.8cm2の範囲に40μl滴下して風乾させた。溶解実験に用いた反応溶液は0.3MのNaOH溶液(pH13.3)で、観察試料を静置した60mlのテフロン製ボトルに50mlを加えて密閉し、50℃の恒温器内で4日間反応させた。反応後の観察試料は、直ちにAFM用液中セル内に設置し、0.3MのNaCl溶液で液中セル内を充填して観察した。
結果と考察
 反応前のモンモリロナイト粒子のほとんどは、単一層まで剥離した状態で雲母基板上に分布し、その粒子サイズは0.5-1.0μmの範囲に分布していた。また、それぞれの粒子は板状結晶であり、その表面にエッチピットなどの凹凸は観察されなかった。溶解実験に4日間供したモンモリロナイト粒子をAFMで観察したところ、一部0.5μm程度の粒子も観察されたが、ほとんどの粒子は溶解により微細化した。また、それらの粒子の粒子厚は反応前の粒子厚と同様の値を示していた。微細化した粒子端面の形状は、反応前と比べて粗雑な形態を示したが、001面にエッチピットの形成等は観察されなかった。この結果は、本溶解実験条件下でのモンモリロナイト粒子の溶解が、001面からの溶解よりも粒子端面からの溶解の進行が極端に早いことを示唆している。酸性条件下でのスメクタイト(ヘクトライト、ノントロナイト、スティーブンサイト)の溶解もまた粒子端面からのみ進行することが報告されており、酸性条件下でもアルカリ環境下でも、スメクタイトの001面は粒子端面に比べ、溶解に対して比較的安定な結晶面であることが推測される。また、モンモリロナイトと同じ2八面体型スメクタイトであるノントロナイトの粒子端面の溶解と本研究の観察結果を比較すると、酸性条件下でノントロナイト粒子端面は、破断面や欠損サイト(粗雑な粒子端面)から比較的早く溶解し、最終的に自形の安定な結晶面が溶液に暴露される。これに対して、今回の観察では、溶解の進行にともなって粒子端面は粗雑になる傾向が示された。この溶解挙動の違いは、異なる反応pHにおけるスメクタイトの表面特性の違いによるものと推測される。

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© 2003 日本鉱物科学会
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