抄録
希土類フッ素炭酸塩鉱物は,熱水変質鉱物脈に伴い,方解石などと共存する。類似した結晶構造を持つことにより,パリサイト中にバストネス石がラメラ状に存在する場合がある。本研究では,バストネス石_-_方解石系の出発物質を用いた熱水合成実験を試みた。合成実験は,La2(CO3)3・6H2O,CaF2試薬混合物,LaF3,CaCO3試薬混合物またはCeF3,CaCO3試薬混合物を用た。実験は,テストチューブ型熱水合成装置または密閉型耐圧容器を用いて,温度300Cから650C,圧力は飽和水蒸気圧,30MPaまたは100MPaで行なった。実験時間は最長200日間である。実験生成物には,100MPa,400Cから600Cでバストネス石+方解石が生成した。300Cまたは350C,飽和水蒸気圧の実験でも,まずバストネス石+方解石が形成されたが,200日間の実験において,パリサイトの可能性を示す回折ピークが得られた。パリサイトは,水の臨界条件以下の比較的低温低圧条件で形成される可能性が示唆される。