日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2005年度年会
セッションID: K7-P48
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ペロブスカイト型MgSiO3のアナログ物質としてのNa1-xKxF3とKZnF3のイオン伝導機構
*吉朝 朗坂本 大介奥寺 浩樹中塚 晃彦
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抄録
フッ化物ペロブスカイトABF3は高温で超イオン導電特性を有する。NaMgF3や KZnF3 は下部マントルを構成するMgSiO3のアナログ物質であり、下部マントルの高い電気伝導度と伝導機構を説明するために多くの研究が行われてきた。これらフッ化物ペロブスカイトでは中高温域で急激な伝導度の上昇がみられ、相転移などと関連付けた議論がなされてきたが、多くの疑問点も残っている。これまでに我々は良質な結晶合成、詳細な相の評価・分析、構造解析、イオン伝導度測定をおこない報告してきた[1,2]。ここでは、フッ化物ペロブスカイトに見られる共通の伝導特性を紹介し、アナログ物質であるペロブスカイト型MgSiO3や他の酸化物ペロブスカイトの伝導機構を比較議論し、高い電気伝導度を有する下部マントルの伝導機構を考える。Na1-xKxMgF3固溶体およびKZnF3は直径6mm厚さ1mmのペレットに整形し、多結晶焼結体を作った。melt-growth法により育成したNaMgF3や KMgF3単結晶、NaMgF3 +2mol%NaF白濁結晶は数mmの円柱状に整形した。整形試料はガードリングをつけ、LF impedance analyzer 4194を用いた複素インピーダンス法によりバルクの伝導度を測定した。合成・測定・解析の詳細は文献[1,2]に詳しく述べられている。図1では伝導度σと温度の関係をアレニウス投影した。低温域から高温域にかけ、外因的(extrinsic: Eα=_から_1.2eV)伝導機構から内因的(intrinsic: Eα=_から_2.2eV)伝導機構に変化する。また、相転移点ではわずかな伝導度の上昇がみられる。しかし、ここで注目に値することは、すべての系で共晶点に対応する温度で伝導度の急激な上昇があり、検出できない組成のわずかなずれや結晶本来が持つ検出限界以下の不定比に起因して伝導度上昇が見られることである。MgSiO3ペロブスカイトでこれまで報告されている伝導の活性化エネルギー(ex. 0.92eV[3])は外因的機構と推測される。下部マントルの高い伝導度をペロブスカイト型結晶に由来すると仮定する場合、アナログ物質からの推測によれば、外因的機構(ただし、この機構は低温域で主要となる)か多成分系での共晶反応などを考えざるを得ない。ペロブスカイト型化合物は機能性材料等として研究されているが不明なことも多く、さらなる研究が必要である。
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© 2005 日本鉱物科学会
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