2023 年 2 巻 p. 41-47
目的:作業科学の中核的概念としてWilcockの “doing,being,becoming,belonging” の理論がある.今回,障害への気づきに困難さを示す高次脳機能障害事例が新たな役割獲得に至る作業過程について,Wilcockの理論を用いて検討した.方法:脳梗塞により高次脳機能障害を呈したA氏と,急性期・回復期・生活期にA氏と関わった3名のOTR に半構成的インタビューを行った.結果:A氏は自力で出来る作業が無い状況から,OTRによる補填手段を用いてセルフケアや家事を行うこと(doing) の成功体験の重積から,自己アイデンティティを再構築し(being),社会的役割獲得(becoming, belonging)への過程をたどっていた.結論:高次脳機能障害者においてもこの過程をたどることを確認した.