2017 年 6 巻 p. 8-12
本研究では,脳血管障害片麻痺者に対する座位練習の効果についてシングルケーススタディの手法を用いて検討した論文を調査し,有効な座位練習プログラムについて考察した.1991年から2016年4月までの論文を対象とし,医中誌Web Ver.5にて検索した.その結果,886編の論文が抽出された.シングルケーススタディの手法によって座位保持練習の効果を検討した論文は,わずか7本であった.対象者は,いずれも運動麻痺が重度で,Pusher現象,左半側空間失認,注意障害,認知症,意識障害などを合併していた.すべての介入が行動分析学に基づく座位保持練習であった.7本中4本は,支持基底面の広さを変化させた段階的な難易度設定による介入であった.2本は体幹傾斜に対して聴覚的フィードバックを用いた介入であった.その結果,すべての症例が11回から28回の介入によって座位保持が可能となっていた.また,介入中に麻痺や高次脳機能障害の改善は認められなかった. 応用行動分析学的技法を用いた座位保持練習は,重症片麻痺者の座位保持能力を向上させるうえで有益なものと考えられた.