こころの健康
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報告
医療機関におけるドメスティック・バイオレンス被害者支援に関する実態調査
菅原 真由美
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2010 年 25 巻 2 号 p. 44-52

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抄録
[抄録]内閣府が実施した男女間における暴力に関する調査では,約4 人に1 人の女性が何らかの暴力を受けた経 験があると回答しており,2001年からは「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」が制定され, ドメスティック・バイオレンス(以下,DV)は社会問題として取り上げられるようになった。DV 防止法では, 医療関係者として被害者を発見した際の通報や情報提供を行う役割が求められているが,大分県の医療機関におい ては,DV 被害者の受診数や障害の程度など被害の実態は把握されておらず,具体的な体制整備もなされていない のが現状である。そこで,大分県内の医療機関におけるDV 被害者の受診状況や支援の実態を明らかにすること を目的に,大分県の病院・診療所1,000施設に対し自己記入式質問紙調査を実施し,設問ごとに単純集計を行った。 有効回答率は34 . 0%であった。
  過去1 年間のDV 被害者の受診は19 . 4%の施設が「ある」と答えた。被害者はさまざまな診療科を受診して いた。殴られた・蹴られた等の被害が多く,DV 被害者へは,治療や処置,詳しく話を聴く,付添者の診察室入室 を断る等の対応を行っていた。医療者は,加害者だけでなく被害者にも問題があると考えていた。実際に院内対策 を行っている施設は18 . 8%であったが,対応マニュアルや相談機関の情報,他機関との連携等を多くの機関が必要 と答えた。今後,医療者が対応に困った際に相談できる機関を具体的に提示できるような教育および情報提供,他 の関係機関とのネットワークの構築および強化が必要と考える。
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© 2010 著者(問い合わせ先は日本精神衛生学会)
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