北海道家庭生活総合カウンセリングセンター(以下センター)が行った相談記録の再集計に基づき,一般
市民の悩みと社会情勢との関連を相談件数の推移から検討した。相談の分類方法を統一した1997 年から2012 年
までにセンターに寄せられた生活に関わる相談106,558 件と,北海道警察から委託されて行っている犯罪被害者相
談室に同じ期間に寄せられた相談15,635 件を対象とした。生活に関わる相談は電話・面接相談件数,男女別件数,
相談者年齢別件数,相談内容別件数,生き方に関連する相談内容における心の病による相談件数の5 項目に分類
し年代ごとの推移をそれぞれ比較した。被害者相談に関しては全相談件数と内容別に年代ごとに推移を比較した。
相談件数は年々増加しており,相談者の年齢に関しては20 代以下からの相談件数は大きく減少しているが50 代
以上からの相談は増えていることがわかった。相談内容は生き方に関連する相談が年々増加しており,近年では全相談件数の6 割を占めていた。被害者相談に関しては2004 年と2010 年を除いて件数はほとんど変わっておらず,2004 年には殺人や通信犯罪等の被害を含めた犯罪相談が増加し2010 年には被害妄想的相談などの犯罪外相談が増えていることがわかった。この結果を経済指標の1 つである完全失業率と比較すると,大きな経済的損失が起こった年には相談件数と完全失業率は増加し,長期の好景気が続いた年には相談件数と完全失業率は減少していた。このことから悩みは景気と何らかの関連をもつ可能性があると考えられた。近年顕著に増加している生き方に関連する相談について,相談者の需要に相談施設が追い付いていない可能性や,また生き方に関連する相談のうち心の病を持つ人からの相談が増加していることから主治医や家族に相談できない悩みをセンターに相談している可能性が考えられた。被害者相談には振り込め詐欺等の新形態の犯罪の増加や不景気が続いていることが影響している可能性も考えられた。
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